曇り空で時折うっすら日がさす中、小浜市にある宇久漁港で、漁師である浦谷俊晴さんにご協力いただき、釣りの体験をさせていただいた。浦谷さんは宇久漁港で定置網漁をされており、現在は小浜市の漁業協同組合の組合長もされている。生まれも育ちも宇久で、漁港は代々受け継いできたそうだ。
私たちが釣り体験をする横で、この日の朝に獲れたヤガラをさばかれている浦谷さんにお話を伺った。

ヤガラのお腹を開けて「見て、脂がすごい!」と嬉しそうにおっしゃっていた浦谷さんの姿が印象に残っている。以前定置網漁の体験で伺ったときはピリピリとした緊張感があり「漁師さんは怖い」というイメージが強かったが、今回この浦谷さんの姿を見てとてもユーモアがあり、温かい人が多いのかもしれないと感じた。
私は今回の体験が釣りをする初めての機会だった。これまでは釣りに対して「初心者には難しい」、「竿を振って投げ入れ、豪快に釣り上げる」というイメージが強かった。今回体験してみてまず感じたのは、指先で行う作業が多いという事だった。糸を準備したり、餌をつけたりと細かい作業が多かったことに驚いたし、だからこそ焦らずに自分のペースでできるところが釣りの良さなのかもしれないと思った。今回の体験を通して、「道具をそろえて、誰からも教わらずに一から一人で」となると大変だけれど、魚を釣るという事自体は初心者でも簡単にできる。一度釣って感覚が分かると「今かかった!」という瞬間や釣れた時の達成感におもしろさを感じるという意味が分かったような気がした。また、釣りは魚の命を手で感じることができる、貴重な機会だと思った。魚がかかって釣り上げるまでにピクピクする感覚があり、今まで生きていた命を釣り上げているのだと肌で感じることができた貴重な機会だった。

今回の体験から、釣りをしたことがない人は、一度でもいいのでやってみてほしいと思った。道具をそろえたり、教えてくれる人がいない状況ではハードルが高いものではあるけれど、道具を借りられたり誰かから教わったりできる環境であれば、釣りはいろいろなことを学んだり感じたりできるとても良い機会になると思った。
また、釣り餌にはムシを使うだけでなく、エビや釣った小魚を使う場合があるということを知ることができた。私自身ムシを触るのには抵抗があった。しかし毎回ムシをつけなくても、エビや魚の切り身でも良い事が分かり、「ムシが苦手だから釣りはできない」と思っている人にも今回の体験のことを伝えてあげたいと思った。
福井県立大学 木村芽唯
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