午前8時ころ、宇久漁港にて釣りを行った。人数は11人。その日は空に雲がかかっていて、少し風が吹いているのが感じられた。釣り用の餌にはアオイソメを使った。ゴカイに似ているが、それよりもすこし太くて青い形状をしている。さらに、胴突(どうつき)といった仕掛けを用いた。
私を含め、11人中6人が釣り未経験者ということで、釣り竿の使い方から学んだ。最終的に、カワハギ、キジハタ、ベラなどの魚を釣ることができた。
さらに、漁師の浦谷俊晴さんに船を出していただき、沖の方まで釣りに出た。比較的小柄な船であったためか、船酔いに見舞われたものもいた。
釣りを終えて、12時ころに、民宿を営んでいた建物に集まり、みんなでお昼ご飯を頂くことになった。先ほど釣ったカワハギ、キジハタ、ゆずのはいった香り高いお味噌汁に、鮭とわかめをそれぞれ混ぜ込みのりをつけたおにぎり、大柄のたいの塩焼き、はまちとやがらの刺身を頂いた。
お昼ご飯を終えた後、私たちは浦谷さんにインタビューを行った。浦谷さんは、鮮度が大切であるということをおっしゃっていた。それも、私たちは鮮度の高い魚から、たくさんのエネルギーを得られるからだそう。実際の文献によると、保存期間が長ければ長いほど魚の組織中のタンパク質やアミノ酸の分解量は増え、魚の組織は酵素活動や微生物の働きによって影響される。つまり、貯蔵時間が短いほど、分解されていない組織を食べられるわけである。新鮮な魚を食せば、酵素や微生物に影響されていない魚を頂けるということになる。

さらに、浦谷さんは長男として生まれ、家業を継ぐことを志したとおっしゃっていた。浦谷さんはそれが宿命だといっていたが、仕事を続けていることは、自分の物事に対するとらえ方に拠るとお考えになっている。というのも、きっと人間にはそれぞれ生まれてきたことに何かしら使命があって、その使命を背負って生きているというのだ。そして、どのような時節においても、前向きに物事をとらえることが必要だとおっしゃっていた。私にとって、浦谷さんが輝かしく、情にあふれていて、生き生きとしているように見えたのは、浦谷さんが何事にも前向きにとらえる姿勢を持っているからだろう。
私も過去、自分の力ではどうにもならない問題にたびたび直面したことがあった。自分の思い通りにはいかないこともあった。それでも今振り返って思えば、すべてが今の私の糧となっていると考えざるを得ない経験である。そして同時に、このような自分でも、他者である魚から命とエネルギーいただいているという事実に、自然に対して頭が上がらない思い出いっぱいになる。そして、今回、釣りという、大自然から恩恵を頂く活動を通じて、エネルギーを他者(魚)からいただいたことで、魚からいただいた命を今世十二分に生かしたいと思う。
福井県立大学 木下百香
【参考文献】Pramod K. Prabhakar , Siddhartha Vatsa, A comprehensive review on freshness of fish and assessment: Analytical methods and recent innovations, Volume 133, July 2020,
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