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暑さが嬉しくなるスイーツ

8月1日には、県内の観測史上最高気温である39.1℃を記録。しかも、その日は日本で最も暑かったそうだ。とにかく暑い今年の小浜。

そんな暑い小浜にある、暑くなればなるほどおいしい食べ物。なぞなぞのようなこの食べ物は、年間を通して約15℃の湧水に冷やされ、ぷるんとした食感の中にほのかに甘いあんこ。喉越しはまさに水のよう。
小浜に巣まう方にとっては当たり前。夏の風物詩「水くずまんじゅう」。

手で掬うだけで崩れてしまいそうな、向こう側が透けてしまう繊細で優しいお菓子は、水くずまんじゅうだけ

この「水くずまんじゅう」。小浜駅から小浜城への途中にある一番町を中心に、以前は和菓子屋だけではなく、八百屋や魚屋などのいろいろな商店が自家製のつくられて販売されていたそうだ。そんなことができたのは、雲城水と呼ばれる地下水が豊富だから。

小浜市民を潤す豊富に湧き出る雲城水

この一番町。実は若狭湾に面した地域。そこに豊富な地下水が湧き出ている。水源は福井県と滋賀県の境にある百里ヶ岳。小浜へ100年以上かけて流れ着くと言われ、小浜には水くずまんじゅうだけではなく、雲城水を仕込み水として使用した「百伝ふ(ももつたう)」というお酒もある。

雲城水が汲むことができるやぐらのすぐ隣は船溜まり

一番町で今も水くずまんじゅうを食べることができるのが、1830年創業の老舗御菓子処「伊勢屋」
この時期、店に入るとまず水の流れる音に惹かれる。音の方向を見ると、なんとも気持ちよさそうに、白いお猪口のような器が清流に浸かっている。
最高の水風呂だ。15℃。掛け流し。小浜近辺の水風呂はもっとぬるい。雲城水の水風呂はどんなに気持ちいいだろう。脱線した。

雲城水に浸かるくずまんじゅうは透明そのもの

「くずまんじゅうは、小浜の隣若狭町の熊川地区で生産された熊川くずとあんこ、雲城水だけでつくっています。生地は熊川くずと雲城水だけ。あんこから甘みを感じてもらうことで、しつこくなく、何個でも食べてもらえるような優しい甘味になるんです。伝承銘菓のくずまんじゅうですが、実はその日に合わせて作り方は変えています。気温とか湿度とか。お客さまにとってその日一番おいしいものを常に提供することを大切にしています」
伊勢屋の六代目上田浩人さんは、老舗の伝承銘菓を受け継ぎながら、オンラインストアの大福専門店「伊勢屋與兵衛」をオープンするなど、常に革新していくことが大事とも語ってくれた。

多い時には2000個以上仕込むことがあるという上田浩人さん

「くずまんじゅうは、注文が入ってから水から引き上げて食べてもらいます。くずのデンプンは時間が経つと白く濁り硬くなるので、食感が変わってしまう。食べ頃は、水から上げて1時間以内です。この小浜に来ないと食べることができないことは良さでもあるのですが、お土産には向かない。そこで、持ち帰ってからも、くずと雲城水のおいしさを味わってもらえるお菓子を最近作りました」
そう言って、上田さんはカラフルな商品を5つ持ってきてくれた。

「雲城水菓子です。UMIHICOのほりこしみきさんと作りました。福井の味である梅や越のルビー、百伝ふ。定番の小豆や爽やかなレモン。くずまんじゅうの味はひとつですが、さまざまな風味で、くずのおいしさを味わってもらいたいと思っています」

雲城水を存分に味わうことができる新商品の「雲城水菓子」

5種のパッケージもとても涼しげ。
「小浜のおいしい世界に出会ってもらいたい。そう思って、劇場の舞台が開くときのカーテンのようなデザインにしました。ロゴマークもよく見てもらうと、雲や雨など水がテーマ。WATER SWEETSなんて新分野を開拓できるのは、小浜だけだと思います」
パッケージのデザインをしたほりこしみきさんは、上田さんと楽しそうに話しながら語ってくれた。

水くずまんじゅうのようにぷるんぷるん。それぞれの味と食感を楽しめるのが嬉しい

水くずまんじゅうは冷蔵庫に入れると白くなってしまうのであまり推奨しないそうだが、この「雲城水菓子」は冷蔵庫で冷やして食べるのがオススメとのこと。保存もしっかり効くので、お土産にもぴったりだ。
この暑い季節に、涼を感じる和菓子。現地で食べる「水くずまんじゅう」に加えて、贈り物や家に持ち帰って次の日も楽しむことができる「雲城水菓子」。小浜に生まれた新たな暑くなればなるほどおいしい食べ物をどうぞお試しください!

INFORMATION

御菓子処 伊勢屋
〠917-0071 福井県小浜市一番町1-6
TEL 0770-52-0766
open 8:30~17:30 closed 水曜

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堀越 一孝

堀越 一孝

フォトグラファー。デザイン事務所UMIHICOの代表。

1982年神奈川県川崎市出身、小浜市在住。 小浜の伝統産業である塗箸の老舗「株式会社マツ勘」で商品企画や広報を行いながら、デザイン事務所UMIHICOの代表をしています。 本職は、フォトグラファー。2014年より写真でまちを元気にする新しい写真の方法『ローカルフォト』を核としたプロジェクトで日本各地をぶらぶらしています。

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