学校の先生から、街の先生へ

「私は小さい頃から尊敬できる大人像がしっかり自分の中にありました。それは運命を受け入れて、自分の言動に責任をしっかり取れる人。そういう大人は案外周りにはいなくって。求めていたからこそ、大人に対して不信感が強かったです」。
そう語るのは、今年2022年3月、国の登録有形文化財に登録された旧中名田郵便局を修復し、「コミュニティカフェ金四郎」としてオープンさせた今回の主役 吉村順子さん。

「6年前に父が亡くなり、広すぎる土地と荒れ果てた建物が遺産として残りました。さすがの荒れように相続放棄や、無難に更地にする手段もありました。でも、その時自分の中の尊敬できる大人像という信念がよぎったんです。後の面倒を受け持つという祖父母との約束を破ることにもなるし、ましてや自分の信念をも裏切ることになる。その時、ここの相続を受け入れ、活用していくまで頑張ってみようと決めました。」

前職は若狭高校で日本史の非常勤講師として若者の教育に関わってきた吉村さん。その頃に学校ではできない教育の形があると感じていた。
「教育の場は学校、家庭だけにこだわらなくてもいい。この地域には学校・家庭以外の、若者の成長を助ける場、サードプレイスがもっと必要であると気付きました。」

地域の子どもたちへの募金箱

子ども用の値段と大人用の値段があるのも、とてもユニーク

大人は子どもの教育を支援したいという思いはあるものの、意外と行動に移せる機会が少ないかもしれないと考えていた吉村さん。
「ここには子ども達への募金箱を設けていて、そういう大人達にとって、この貯金箱は良い機会となっているように感じています。本当に多くの方が進んで募金してくださっていて、そのおかげでもう既に一万円以上の募金が集まりました!募金してくださる度に、温かい気持ちになります。」
そう嬉しそうに語る吉村さんの表情からは、幼少期抱いていた大人に対する不信感を一切感じられなかった。
今後この募金で、様々な”体験”を子ども達に届けるため企画中だそう。

あえて隙を作る

私はこの取材を通して、吉村さんは意図的に隙を作るのが上手だと思った。他の人が関わることができる余地を作っておく。
「100%頑張った上で、できないとわかったことは助けを求めていいです。完璧じゃない姿を子ども達に見せる。畑仕事もちょこっと仕事を残しておいて子ども達に頼んでみる。そうしたら、子ども達は快く手伝ってくれます。そういう体験が大事だと思うんです。」
こういう吉村さんの周りを巻き込む力が、自然とみんなに当事者意識を感じさせ、 “みんなの金四郎”を作っているのだろう。

中名田の子はいいなあ。街の先生がいて。
金四郞を通していろんな人と出会い、様々な体験をして、たくさんの思い出を作る。
単純に聞こえるかもしれないけれど、
思い出いっぱいの子ども達には
わくわくいっぱいの選択肢がこれから広がっている。

金四郎の前は小学生達の通学路。駄菓子があるのが最高と自慢げに教えてくれた。