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福井県立大学生たちが、『おばま水族館』を作る理由 〜眞壁喜一郎さん〜

古くからの都との交流と、北前船の寄港地としてのにぎわいを今に残す重要伝統的建造物群保存地区の一角、三丁町。その古民家のひとつが、福井県立大学の学生たちの手によって、静かに姿を変えつつある。2026年5月1日、学生たちが企画・運営する「おばま水族館」が、この場所でのオープンを予定している。

三丁町に海側から入ってすぐの角に「おばま水族館」はオープンする。

「おばま水族館」の船頭役

「クラスメイト全員が漁師になって漁村を作れたらいいなあ、と前から思っていて。頭のいい人は医者になって診療所を開くとか、海だけではなく山の漁師も兼業する人がいたり。その一環で、捕った魚を展示する水族館をやりたいとぼんやり考えていました。でも、大学生のうちに実現させようとは思っていなかったです」
そう話してくれたのは、「おばま水族館」の立ち上げを進める眞壁喜一郎さん。出身は大阪・高槻市の山間部。お寺が点在し、谷の名を冠した中学校に通った、海とは縁のない場所で育った。そんな彼が海と魚にのめり込んだきっかけは、小学2年生の夏に参加したキャンプだった。

話を聞かせてくれた眞壁喜一郎さん。いつもはメガネをしていないけれど、この日はコンタクトの調子が悪く珍しいメガネ姿。

「時間は設けるけど、何をするかは自分で決めるという方針で、海辺に人を放つだけなんです。砂遊びでもいいし、ずっと泳いでもいい。そこで、小指ほどの小さな魚を網で初めて捕まえた時の嬉しさが、忘れられなくて」
釣りでは全然釣れず、大きな網は高学年の参加者が持っていて使えなかった。小さな網で砂浜の浅いところをひたすら探して、やっと1匹。その瞬間の感動が、今も残っているという。
「魚を網で捕まえる醍醐味って、自分が用意した四次元ポケットみたいなところに魚を追い込む動作だと思うんですよ。あれがあるから魚取りが面白い。それが面白いと思ったから、ずっと漁師になりたいと思ってきた気がします」

取材中、「みんなで」という言葉が何度も眞壁さんの口から出た。なぜ一人ではなく、みんなで、なのか。
「人間のエネルギーって、負の感情から来ることもあると思っていて。自分の家庭環境の影響もあるのかもしれません。両親は仕事人間で、家族みんなで何かを一緒にするということが、あまりなかったんです。そんな環境の中で、自分の役割というものを自然と持つようになって。人が集まったら、その集団をどうしたらうまく成り立つか、気づけば自然に考えてしまうようになりました。刷り込みのようなものです(笑)。お腹が減ったらご飯を食べるのと同じように」

水族館に関わる準備は、全て福井県立大学の学生たちがみんなで行っている。

なぜ、小浜で、水族館なのか

「水族館の構想は、大学1年生の11月だったと思います。眞壁が来て、福井県立大学があって、小浜であるから、水族館という答えになりました。小浜には豊かな海のすぐそばにあるのに、水族館がない。福井県立大学には養殖学科があり、その知識を応用できる場として水族館が自然に思い浮かんだんです。さらに、湧き水が豊富でリアス式海岸なので山と海の距離がとても近い。小浜湾は湾口が閉じているので淡水が溜まりやすく、淡水魚と外海の魚、両方が10分以内で獲れる場所なんです。渓流もあって、もう全部堪能できるんです!」

2025年の8月に伺った時、水族館の未来だけではなく、小浜の魅力についてもたっぷりと語ってくれた。

さらに眞壁さんは、まちの空気についてもこんなふうに感じていた。
「若狭宇宙鯖缶、よっぱらいサバ、発酵食品などなど、地域として様々なアイデアを形にしてきた歴史があって、常に変化を求めているような潜在的なモチベーションがあると感じています。でも、失礼かもしれませんが、外に出すのはあまり得意ではないんだろうな、とも思っていて。ならば、外に出すことを苦としない学生たちの“好き”という熱量をうまく包括しながら、地域にないものを作ることで、地域の人たちも受け入れてくれるんじゃないかと思いました」

部屋の中に所狭しと並ぶ水槽には各担当(学生)がおり、自分たちの好きな世界を表現するそうだ。

「この場所に決めたのは、立地や物件そのものよりも、オーナーの存在が決め手でした。借りる立場では本来、改修の監修はできません。そこで、三丁町の古民家再生などを数多く手掛ける村松建築の村松徹哉さんに入ってもらいました。オーナーが出資して、その工事の相談役として眞壁が入るという共同プロジェクトの形にしてもらうことで、ぼくの意見を改修に反映してもらえるようになったんです」
眞壁さんが水族館としての理想を伝え続け、村松さんが町屋を残したいという思いで応える。その繰り返しで、今の姿が生まれていった。水族館という言葉からは想像できないような、純日本風の木造建築。杉張りの梁が残り、古民家の空気感がそのまま息づく空間に、水槽が並ぼうとしている。
展示は1階が「歩いてみる水族館」、2階が「座ってみる水族館」。人数制限を設けた2階では、町屋の静かな空気の中でゆっくりと魚を眺めることができる。
「西津にあるGOSHOENのような、心からゆっくりできる空間に水槽が潤いを与えるイメージで。ちょっとゆっくりしていこうかな、と気軽に立ち寄れる場所にしたいんです」

築100年以上の民家を改修し、全国でも珍しい和風建築の水族館となる。

運営に関わる学生は、現時点で40名弱。大きな広報はほとんどしていない。InstagramのストーリーやLINEグループへの投稿、口コミで自然と集まってきた。1学年80〜90人いる中の4人に1人ほどが、何らかの形で関わっている計算になる。
「地域の方から連絡が来ることもあります。いつも通っている美容室の方が椅子を持ってきてくれたり。どこかで活動のことを聞いて関わってくださる方の存在は、本当にありがたいです」
各自が担当の水槽を持ち、それぞれのやりたいことを形にしていく。眞壁さん自身は大好きなカサゴの水槽を担当する予定だ。
「何でも好きにしていい。でも、なぜその魚を選んだのか、何に惹かれているのか、その背景をうまくみんなにプレゼンできたら、この水族館は唯一無二になっていくと思っています」

天井や柱の雰囲気と、いただいた椅子のコントラスト、ここに水槽も並んで、これからどのような空間になっていくのだろうか。

日本一、住みたいと思える水族館へ

目標に掲げるのは「日本一、住みたいと思える水族館」だ。
「学生が入れ替わり、魚も季節ごとに変わる。古民家の雰囲気の中で、ここに住みたいと思ってもらえる場所にしたい。あなたの知らない小浜を見せられると思っています。観光で来ても、海に潜る機会はなかなかないじゃないですか。小浜の魅力は海と魚と土地にあって、それをここで感じてもらいたいんです」

特注の大型水槽などの設置から運用も、学校で学んだ知識を活かす最高の舞台となる。

オープンを前にした今の気持ちを聞くと、眞壁さんは少し笑いながら答えた。
「何とかなるだろうな、と思っています(笑)」
その言葉は軽くはなかった。資金繰りの緊張も、仲間を集めるまでの試行錯誤も、クラウドファンディングで支援者ひとりひとりの顔が浮かんでくる体験の重さも、全部経験してきているからこその言葉だった。

長い年月、人の往来とともに灯りを灯してきた三丁町の通りに、新たな光が加わろうとしている。小浜の海と魚、そしてこのまちが積み重ねてきた記憶を湛えながら、学生たちの手で生まれたこの場所が、三丁町の歴史にあたらしい物語を書き加えていくことが楽しみだ。

おばま水族館
〒917-0072 福井県小浜市三丁町
営業日:木・金・土・日曜
営業時間:10:00〜16:00
入館料:通常料金 大人700円 / 高校生以下300円 / 小学生未満無料
    小浜市民 大人100円 / 高校生以下100円 / 小学生未満無料
HP: https://obama-aquarium.com
Instagram:@obama_aquarium(※最新情報はInstagramをご確認ください)
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堀越 一孝

堀越 一孝

フォトグラファー。デザイン事務所UMIHICOの代表。

1982年神奈川県川崎市出身、小浜市在住。 小浜の伝統産業である塗箸の老舗「株式会社マツ勘」で商品企画や広報を行いながら、デザイン事務所UMIHICOの代表をしています。 本職は、フォトグラファー。2014年より写真でまちを元気にする新しい写真の方法『ローカルフォト』を核としたプロジェクトで日本各地をぶらぶらしています。

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コメント

    • おかりゅー
    • 2026.04.18 7:00pm

    小浜に帰省したら子どもぎお魚大好きなので、行ってみたいと思います。楽しみ😊

    • 堀越 一孝

      愛がたっぷりと詰まった素敵な場所ですので、ぜひご訪問ください!コメントありがとうございます!

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