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「おくどさん」から伝える、美味しい小浜と日本食文化

ニューヨークや京都など、多くの人と文化が集まる都市でいくつもの和食店を手掛けられている中東篤志さん。2021年6月、舞鶴若狭道小浜ICを降りてすぐの「道の駅若狭おばま」隣に「和久里のごはんや おくどさん」を開業されました。今回は、中東篤志さんへのインタビューを通じて「おくどさん」と中東さんご自身のことを紹介させていただきます。

「おくどさん」のスタッフと中東篤志さん(真ん中)

「小さい頃は、花背(はなせ)の山奥にある父の実家の料理旅館『美山荘』の調理場を見ながら育ったんです。(父は中東久雄さん。小浜市の御食国大使をされている) いけすに泳いでいる鯉を捌いているのを見たり、山菜摘みを手伝ったり、食材や料理のことをすごく身近に触れる環境で育ちました。でも昔の日本料理店は、ほんとに地獄絵図のような厳しい世界で、料理店の厳しさも身近な体験としてありました。それもあって、小6の時に父が独立して『草喰なかひがし』を開業したての時は、僕もお皿洗いなどを手伝っていたのですが、プロの料理人の姿を間近に見て、面白いもんだと思いながらも、子どもの頃の自分は料理人にはならないと思ってたんです。

高校卒業後にバスプロになるためにアメリカに行きました。アメリカで生活する中で、友達に日本食を振る舞う機会も増え、美味しいって反応もたくさんもらうようになって、もっと広く日本食を知ってもらうこともおもしろいと思い始めてきました。その後、縁があって2009年から精進料理屋『嘉日』の立ち上げに関わり、ニューヨークに移り住みました。3人の料理人がいたのですが、その中で僕は英語がしゃべれるということで、料理するという以外にお客様に食のことを伝えるという役割を担っていました。お客様への対応の中で、例えば『この出汁どうやってとってるの』とか『なんで日本食ってご飯食べるの』とか、日本人だと出てこないような質問が多かったんです。伝えるために勉強しなくちゃいけないし、アメリカ人に伝えるためにアメリカ文化も知らないといけない。食を通して日本食のことを伝えるってことがどんどん面白くなって来たんです。それで、もしかして自分のやりたいことってこれかも知れんって」

日本食文化をまずアメリカで、それから日本人へ伝えていく仕事をしていこうと決意し、OneRiceOneSoup株式会社を設立。2015年にニューヨークで日本料理店「SAIKAI」のディレクション。2017年、京都祇園で「朝食 喜心」の監修。そして、2019年に自らオーナーとして開業された「そ/s/KAWAHIGASHI」など、新しいお仕事に次々とチャレンジされスピード感のある姿には、聞いていて圧倒されるものがありました。お話を伺う中で「美味しさを通して日本食を世界中の人に伝えていきたい」という思い、縁を大切にされる心、そして提供する料理を通じてお客様から頂く嬉しい声が中東篤志さんを突き動かす力となっているように感じました。

週の半分は小浜に滞在し、ご自身がお店に立ちながらお店の未来を構想している

それから、中東さんの目指すところは都市から“産地”へと向かって行きます。
「仕事として小浜との最初の接点は、ビザの手続きで日本に帰って来た2016年ですね。僕、高校卒業してすぐアメリカ行ったので、もっと日本のこと知らなあかんと思って、東北や九州、関西の生産者めぐりをしていたんです。そのタイミングで、御食国大使の父に声がかかった小浜市の企画があって、父から『お前もついてくるか』と誘われて小浜を訪れました。
小浜の料理人と宇久定置網漁の漁船に乗って、その魚を食文化館で料理して、小浜の人たちと食べるって企画やったんです。宇久に着いたら『うわ、ここ釣りで遊びに来てたところや』ってなって、いろいろと縁を感じました。

それをきっかけに小浜市からお仕事をいただくようになりました。来るたびに漁師さんとか生産者さんに会わせてもらったのですが、そしたら食材の持ってるレベルがめちゃくちゃ高い。
あと、日本食ってなんですかって聞かれたら、僕は初めに『お箸で食べることです』って答えるんですけど、お箸が産業としてこんなにも息づいている街って全国で小浜だけじゃないですか。それと水がすごく豊かで、文化も含め市民が水を気にしてる感じがあるなと。

歴史から見ても日本食文化を伝える上で若狭小浜がなかったら、日本食は今の形として存在していないですからね。京都の食が育ったのは、若狭や淡路、志摩も含めた御食国あってこそ。御食国がなければ京都の食はなかったし、日本食は今とは全然違うものになってた可能性もあります。
地元食材、箸産業、水、そして歴史。心の底からこの街の食すごいなと思ったし、『ここや!』って思ったんです。この地に自分の身を投じたら、もっと食のことを知れるんちゃうか。もっと発信できるんちゃうかって。

『おくどさん』では食材の90%以上を若狭もんにすることで、小浜の食を伝えていきたいと思っています。『小浜の食ってこんなに美味しかったんや!』とたくさんの方に新しい出合いを見つけて欲しいです。小浜で暮らす市民や生産者のみなさんが今よりもっと自分たちの土地へ誇りや愛着を持ってもらえるように」

訪れた時の小浜の旬を味わうことができる「おくどさん」のメニュー

生産者の立場(私)としては、お話をお聞きする中で背中を押してもらう思いをした場面がいくつもありました。90%も小浜産を使用し、「美味しい」を日々追求しながら料理を提供されている中東さんの姿勢を見ていると、今よりもっと「美味しい」農産物でお応えしたいという気持ちになりました。

長く同じ場所に住んでいると、その土地や地域の魅力が“当たり前”になっていきがちで、過小評価にも繋がる可能性はあります。中東篤志さんは料理を通じて世界中を見てこられた経験の上で、私たちの暮らす小浜の魅力を熱く語ってくれました。

小浜の魅力が込められた種を乗せて、新しい風を吹かせてくれている中東さん。その風をぜひ「おくどさん」で感じてください。

Shop information

和久里のごはんや おくどさん
住所:〒917-0024 福井県小浜市和久里24-25-1
電話番号:0770-64-5246
営業時間:11:00〜17:00
定休日 月曜日(休祝日の場合は翌日)

  • CREATORS
  • CREATORS POST
岡本竜平

岡本竜平

福井県小浜市生まれ。農業法人「永耕農産」の社員。

福井県小浜市生まれ。石川県で7年過ごし、ふたたび小浜で暮らしています。子どもの頃はインドア派だったし、じいちゃんの田んぼを手伝った記憶もないのに、今は農業法人「永耕農産」の社員です。動機は「地域の役に立つ人生の使い方いいじゃない」。農業は学べば学ぶほど面白みを感じてきています。米、野菜って動物のように育てるものじゃないだなって。

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