全11社の大調査!小浜の特産品『若狭小浜小鯛ささ漬』

テーブルにずらっと並んだ四角い箱や丸い木樽。持ち手がついていたり、「ちんちこ鯛」や「すゞめ小鯛」なんて書いてあるものも。
これは全部「若狭小浜小鯛ささ漬」。現在、小浜ささ漬協会に加盟している全11社の商品です。
小浜に暮らす人でも、全部食べたことがあるという人はどれだけいらっしゃるでしょうか。

12月4日に開催された2回目となる『御食国 若狭小浜小鯛ささ漬 History発掘プロジェクト』では、いよいよ小鯛ささ漬の調査が開始されました。(第1回とプロジェクトの概要はこちら

この日はまず、立命館大学の食マネジメント学部の学生たちと美浜町へ出発。
美浜町は、観光キャンペーンガールに「へしこちゃん」を採用するなど、小浜同様「へしこ」が特産品のまち。
同じ若狭地域で、同じ名前の特産品。味や製法なども同じなのでしょうか。市街地から山道を進み、三方五湖のひとつ日向湖(ひるがこ)沿いの美しい漁村集落、日向町へ。

山と名前は湖だけれど海とつながる日向湖の間にある映画の舞台のような雰囲気を漂わせる集落

美浜町日向にある民宿の女将さんたちが共同でつくる鯖のへしこ『日向のかぁちゃんの特製へしこ』をつくっている、「女将の会」の加藤美樹子さんと美浜町地域づくりサポーターの伊達美鈴さんにお迎えいただき、美浜のへしこについてご紹介いただきました。

『日向のかぁちゃんの特製へしこ』をつくる「女将の会」の加藤美樹子さん (撮影:松村真心)

「1年間常に見守って、愛情いっぱいに育てたへしこを真空パックにしてお店に出す時、我が子を送り出したような寂しささえ、いつも感じています」そう語る加藤さんは「旅館 日の出屋」の女将さん。「子どもを育てるのと一緒で、へしこをつくるのは、たくさんの手間がかかります。でも、美味しくなると嬉しいの」へしこを製造する小屋の中に保管されている、へしこ樽のひとつひとつがビニールに包まれ、丁寧にへしこが育てられていることが伝わってきます。

“美浜町のへしこの伝道師”とも言える美浜町地域づくりサポーターの伊達美鈴さん

「鯖を塩漬けにした後に本漬けをする際、旨味の詰まった“しえ”と糠と合わせて本漬けをします。その時、作り手ごとに異なるこだわりの調味液を一緒に入れて漬け込むんです。美浜町の人は自分のへしこが世界一美味しいと思っていますから、どれも本当に美味しいんです。たくさんの方にへしこを楽しんでもらえるよう“ヘシコンチーノ”などの料理を考案したり、もっとへしこの魅力を知ってもらいたい」と、へしこに対する愛いっぱいに伊達さんは美浜のへしこを紹介してくれました。
第1回で見学した「民宿佐助」のへしこをつくる時に添加するのは塩と糠でした。でも、美浜のへしこは調味液で味を整えます。その違いなのか、味見をさせていただいた美浜のへしこは旨味のある後味が心地良く、学生から「こっちのは、まろやかな気がする」と味の違いについて思考を巡らせていました。

同じ“へしこ”という名前なのに製法が違ったり、鯖を塩で漬けた時に上がってくる旨味成分を含んだ水分(魚醤)を、小浜では“すえ”と呼ぶけれど、美浜では“しえ”と呼ぶなど、同じようでも作り手によって違いがあることを発見することができました。

場所を美浜から「食文化館」に移し、いざ小鯛ささ漬の調査です。
同じ小鯛ささ漬の商品ですが、各社でパッケージは異なります。調査では、味だけではなくパッケージや原材料、中身の違いなどを細かく見ていきます。
学生たちは、カメラを使って外観を記録する人や、原材料や使用されている木樽の形状、笹、昆布、ビニールなどの有無、木樽の中に入っている小鯛ささ漬の枚数を計測する人などに分かれ、11社の小鯛ささ漬を調査しました。

「あれ、さっきのとちょっと木樽の大きさが違う」
「こっちは食べ方の説明文が入ってる」
「切り身の入れ方、上の方は表が見えるように皮面が上に詰められてるけど、途中から裏向き。こっちは一番上だけ皮面が上だ」
「切り身の表と裏が交互に入って、間に昆布が入ってる」
各テーブルから、たくさんの「なんでだろう?」が聞こえてきました。

木樽に使用されている杉板の厚みを測ったり、切り身の枚数や大きさを測ったり、普段なら意識しないだろうことに意識を向け、徹底的に調べます。

外観調査が一通り終わったら、いよいよ味の調査。11社の小鯛ささ漬がトレイに並んだ光景は、なんとも贅沢。
酢飯を丸く握って、小鯛ささ漬のてまり寿司でいただきます。

味を見る時も、ただ食すのではなく、色や木樽の風味、噛んだ時の食感、切り身の締まり具合などをしっかり調査していきます。
「原材料を確認しながら食べてみると、それぞれの役割が分かったような気がしました。甘味、旨味が強いものや酸味のあるもの、生っぽさが特徴的なものなど、11社全部が違って自分の好みがでますね」と語ってくれるなど、ただ「おいしい!」と楽しむのではなく、学生たちは小鯛ささ漬の懐深さを感じているようでした。

木樽はどこから仕入れているのか?どこでどのように作られているのか?塩はどんなものを使っているのか?締め方はどう違うのか?などなど、これからの調査項目が浮かび上がる中、この日は小鯛ささ漬に欠かせない「お酢」の調査を最後に実施。

小浜市で宝永7年(1710年)創業の「株式会社 とば屋酢店」。300年以上、壺を使った伝統製法による米酢をつくり続ける小浜を代表する老舗です。
甘くてちょっとツンとする香りを感じながら、壺が敷き詰められたお酢を仕込んでいる現場へ。
「お酢は米と麹からつくられた甘酒を、壺の中に生きている種酢(酢酸菌)と混ぜ、酢酸発酵により生成されます。壺の表面に膜のようなものがあるでしょ。これが酢酸菌膜(ちりめん膜)。これがお酢が醸し出されている証拠です」と、「とば屋酢店」の中野貴之専務にお酢造りについてご説明いただきました。

「小鯛ささ漬に使用いただいているお酢は、みんな同じものです。特別なブレンドなどをしているところはありません。シンプルな純米酢です。うちのお酢を現在使用いただいているのは、半数くらいですかね」と、小鯛ささ漬に関わる情報もしっかりと。

古来から、豊富な海産物を御食国として朝廷に届けていた小浜。その海産物は、塩や酢で締めたものが運ばれたことからも、「とば屋酢店」のような醸造の現場が不可欠だったことがわかります。その食文化を支え、発展させた醸造技術のおかげで、小鯛ささ漬も生み出されたのかもしれません。

小浜市内にとどまらず、その伝統製法で作られる芳醇な香りのお酢は、全国の料理店やお客さんに愛されています

今回は、たくさんの小鯛ささ漬に関わる「なんでだろう?」を得ることができました。
「御食国 若狭小浜小鯛ささ漬 History発掘プロジェクト」は、これからが本番。今回生まれた疑問や学びを持って、小鯛ささ漬を解明する調査は続きます!

おまけ
学生たちの撮影した当日のスライドショー

  • 撮影:平田束

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