小浜の海産物加工技術の到達点とも言われる『若狭小浜小鯛ささ漬』。その誕生の謎から未来を探るシンポジウム『若狭小浜小鯛ささ漬誕生の謎に迫る』が2月26日にオンライン生放送で開催されました!
立命館大学食マネジメント学部准教授の鎌谷かおる先生による「海の道、湖(うみ)の道、魚の道 〜魚で読み解く江戸時代〜」と題した基調講演からはじまり、『若狭小浜小鯛ささ漬けHISTORYプロジェクト』の中間発表。そして、食マネジメント研究のスペシャリストたちによるシンポジウム。3時間小鯛ささ漬のことを語り、探り合う、大変濃密なイベントとなりました。
「歴史は資料に書かれていることからしか分からない。でも、当時の暮らしを直接知ることができる日常や当たり前は、書き残されることではない。だから、ひとつのキーワードの背景が大切。“御食国だった”ではなく、“なぜ御食国となり得たのか”という、表向きの状況をつくることができた背景を考えることが重要」。
鎌谷先生は、漁業の歴史を紐解くことで分かるのは、食のことだけではない。当時の社会のあり方や暮らしなどが見えてくる。それこそが大切とお話しされました。
2021年10月からスタートした立命館大学食マネジメント学部の学生たちによる『若狭小浜小鯛ささ漬けHISTORYプロジェクト』。まさに、“背景”の調査をするプロジェクトです。
中間報告では、活動およびプロジェクトから見えてきた小鯛ささ漬の課題。その解決に向けたアイデアが発表されました。
小鯛ささ漬の認知度が低いという課題を解決するため、小さなお子さんのいる全国の家庭をターゲットとした「ささ漬レシピコンテスト」。小浜に来ても小鯛ささ漬を味わうことができないという課題を解決する「居酒屋での突き出し提供」。この2つを掛け合わせ、レシピコンテストの入賞作品を突き出しとして提供することで、小浜に足を運んでもらうきっかけにもなるというアイデアです。
食マネジメント学部の平田束さんは、「何度も小浜に来ていますが、調査での食べ比べや製造の現場でしか小鯛ささ漬を食べることができず、お店で小鯛ささ漬を食べたことがありません。居酒屋などで食べることができれば、お土産候補にもなる」と語ってくれました。
「小鯛ささ漬のパッケージは、筆文字と鯛のイラストがほとんどで大人向けのデザイン。若者には手に取りづらい。もっと手に取りやすく、揃えたくなるようなパッケージとすることで、プレゼントなどにも選ばれる身近な存在になる」と、食マネジメント学部の川島彩萌さんは「パッケージの重要性」について発表してくれました。
シンポジウムでは、立命館大学の南直人先生がファシリテーターを務め、パネラーとして高田 剛司先生(立命館大学)、鎌谷かおる先生(立命館大学)、下仲隆浩さん(小浜市文化交流課)が登壇されました。
食を通したまちづくりを専門としている高田先生からは、ふるさと納税などの口コミ評価が高いけれど、レシピサイトの登録レシピ数はへしこの1割ほどしかない。instagramのタグの数は、へしこ1.8万件に対して小鯛ささ漬は600件ほどしかないことなど、データで見る小鯛ささ漬の現状を紹介いただきました。
「新しいものは、一時的に盛り上がるが続かない。それでは、地域ブランドと言うことはできない。持続性が大切です。そのためには、どれだけ地元の人が支持をして、誇りに思っているのか、そういうところに外の人が魅力を感じてブランドとして成り立っていく」。
データを活かし、歴史ある小鯛ささ漬のブランディングをこの先どう進めていくのか。高田先生から、今後のプロジェクトを進める上での貴重なヒントをいただきました。
小鯛ささ漬は、「地理的表示(GI)保護制度」にも登録された、名実ともに小浜を代表する特産品のひとつ。しかし、高田先生は「ブランドは作り出すものではなく、認められるもの」とも、お話しされていました。地域の宝は、地元の人々が愛し誇りを持ってこそ輝き続けるもの。外だけではなく、内側でしっかりと温めることが大切だと改めて考えさせられました。
『若狭小浜小鯛ささ漬けHISTORYプロジェクト』は、まだ始まったばかり。今回のイベントでは立命館大学の方々がメインとなりましたが、提案や議論されたことを実施できるのは、小浜に暮らす私たちです。
これからも小浜の宝をより地元の誇りとして輝かせていけるよう、自分ごととして応援いただけると嬉しいです。
ここで紹介できたのは、本当にイベントの一部だけ。見逃した方はぜひアーカイブをご覧ください!
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