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みんなで小浜の未来をつくる『小浜市食のまちづくり条例』

2001年、小浜市では「御食国」としての唯一無二の歴史風土と文化を軸に、国内でも類を見ない「小浜市食のまちづくり条例」が制定された。その後、約20年間に渡り、現場でその条例を支え、実践してきたのが中田典子さん(小浜市企画部 食のまちづくり課 課長/御食国若狭おばま食文化館 館長/小浜市政策専門員(食育))。
食や環境、そして社会状況が急激に変化し続けたこの20年間と、これからの未来を中田さんはどう感じ、考えているのか取材しました。

▶︎「小浜市食のまちづくり条例」は、こちら

中田さんに聞きました

小浜市食のまちづくり条例」が制定された背景を教えてください

当時、まだ「食育基本法」もなければ食を起点とした施策などもほとんどない時代でした。しかし、周辺都市がさまざまな開発や発展を遂げるなか、「小浜市にしかできない未来づくり、人づくりを」ということで、政策宣言条例でありながら、自治基本条例に限りなく近い立ち位置のものとして、きちんと未来に残り続けていくように条例として制定されました。

いまでこそようやく時代が追いついてきているように思いますが、先進的な発想に当時は理解を得られることが難しかったのでは?

そうですね。当時も実現までにかなりの労力と時間を要したようです。当時の幹部が、じっくり時間をかけて各所へ説明し、少しずつ賛同を得られて実現したと聞いています。
そして、条例が制定され、それが地元に浸透してきた背景には、やはり、この地域に「御食国」としての歴史風土や、地元の方々の食に対する高い意識が潜在しているからだと思います。

この約20年間の変化をどのように感じていますか?

私は元々、教育現場で働いていたのですが、「日本の若い世代の心の力が弱くなってきているのではないか。その要因の一つに食環境の急激な変化があるのではないか」ということを感じていました。
また、私自身が子育てをするようになり、食育に強く関心を持つようにもなりました。その後、ご縁あって2003年に食文化館のオープンと同時に小浜市食のまちづくり課に赴任し、以降、様々な食育事業に携わりながら「食環境と人の内面のつながり」というテーマを追求し続けています。
時代がようやく追いついてきたとは思っていなくて、まだまだやらなければいけないことがたくさんあります。私たちは「生涯食育」(人は命を受けた瞬間から老いていくまで生涯を通じて食に育まれる)、「義務食育」(市内の就学前の園児、小学生、中学生全員が一定の食育体験学習ができる)という2つのテーマで実践してきました。
特に「義務食育」については、キッズ・キッチンの取り組みなど「小浜で育つ子どもたちは全員、誰ひとり取り残さず食を通して生きる力を養う」ということを実践しています。お箸の使い方から、魚の捌き方、いただき方まで。全てに意味があり、生きていく力につながるということを私自身も実感しながら進めてきました。
ちょうどキッズ・キッチンの取り組みで最初の頃に教えていた子どもたちが現在就職する年齢になり始めて、食育の道に進みたいという子どもたちも出てきていると聞いて嬉しく思っています。

キッズ・キッチンや食育の中心となる「御食国若狭おばま食文化館」のキッチンスタジオ

まさに食べることは生きること、それを全ての子どもが実践できる土地というのは素晴らしいですね!

そうですね。やはり子どもたちにとっては、家族や学校だけではなく、いかに地域の人たちと関われる機会を多く持つかということが大切だと思っています。
幼いころから、どのように食と向き合い生きるかということを意識した原体験があれば、たとえ職業として食関連の道に進まなかったとしても、変化の多い時代をしなやかに生きていくことができるのではないかと、これまでの経験から確信を持っています。

これからの中田さんの思いや実現したいことを教えてください。

現在、ちょうど「食のまちづくり計画 (第4次小浜市食育推進計画)」を策定したところで、より食育を起点として、幅広くまちづくり・人づくりを展開していきたいと思っています。
「食環境と人の内面はつながっている」という現場での実感を、客観的データとしても残しながら中長期的に検証・実証していきたいですね。今後は、子どもや女性だけではなく、これまで参加される機会が少なかった方々や男性にも参加していただけるような食育を通した人づくりや地域づくりも予定しています。
私が大切にしている言葉に「不易流行」がありますが、時代と合わせて暮らしは変化していくけれど、その時に小浜にしかない本質を持ち続けていきたいと思っています。

ありがとうございました!

これからも小浜市が進めていく“食のまちづくり”の具体的な取組みが明記された『食のまちづくり計画』

\ 編集後記 /

3.11やコロナ禍、ウクライナ侵攻など世界が目まぐるしい勢いで変化してきた時代、これまで国内では社会経済の在り方とともに、家族や家庭の在り方も模索され続けてきました。そんな中、20年以上も前に、地域独自の歴史風土を活かした「食のまちづくり条例」を制定した小浜市。 これからさらに「第4次小浜市食育推進計画」が始まり、より『人が自分らしく暮らすことの豊かさ』を中心に表現する食のまちづくりがはじまる。ひとりの小浜ファンとして、これからがますます楽しみです!

text&edit:福留千晴

INFORMATION

御食国若狭おばま食文化館

〒917-0081 福井県小浜市川崎3丁目4番
HP: http://www1.city.obama.fukui.jp/obm/mermaid/
tel : 0770-53-1000

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編集部

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