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産業と地域のかけはし『STANDARD-02 GOSHOEN 松本啓典さん』

国内の塗箸生産量の7割以上を占める一大産地小浜。箸生産の中心地である西津は、昔から漁業と箸産業が共存する海沿いの地域。2022年で創業100周年を迎える塗箸問屋の老舗「株式会社マツ勘」代表の松本啓典さんは、小浜市を拠点に活躍した北前船の商人「古河屋」が藩主や賓客をもてなすために建設した県の有形文化財「旧古河屋別邸 護松園」を、『みんなの別邸 GOSHOEN』と刷新し、地場産業の価値を未来につなぐ。

-リノベーションのきっかけは?

創業100周年を迎えるにあたって、漠然と自分たちのものづくりを表現する場が欲しいと思っていました。そんな時、市役所から護松園の管理について相談されていると、会社の会長に聞いて、「あ、ここかも」と閃いたんですよね。建物の傷みも激しかったのですが、会社のすぐ近くでもあるし、地元の大切なもの。地場産業を担う自分たちがこういったまちの宝を残し、価値を表現するにはここしかないと思いました。ちょうど、同じタイミングでリノベーションを通したまちづくりの経験者が入社して、活用を決めた次の日には、ほぼ今と変わらない活用プランを作り、とんとん拍子に進んでいきました。

-物件との出会い

子どもの頃から存在は知っていたのですが、実は入ったことはありませんでした。活用を決めてから初めて入り、派手さはないのに細部のこだわりが放つ雰囲気に感動しました。

GOSHOENには、箸のプロフェッショナルが自信を持ってオススメするマツ勘直営の箸専門店がある

-改修はどのように実施しましたか?

県の有形文化財ということもあり勝手にはできません。柱に釘を打ってはいけなかったり、少なくない制約を福井県や小浜市の有識者、建築家、地元工務店とミーティングを重ね、みんなで頭を悩ませながら進めています。護松園は3年に渡る改修工事を計画しています。2020年度の1年目は本邸部分。2年目から3年目で蔵や庭、外構など。改修資金は文化庁や福井県、小浜市の補助も受けながら進めています。

-大切にしていること

本業である箸産業をしっかりと繋いでいくための場にしていくということ。決してカフェがやりたかったわけではありません(笑)地場産業に関わる私たちが、まちの宝を運営することで、地域の産業がまちの未来をつくるということを感じて欲しい。GOSHOENで箸をはじめとした地場産業の魅力に触れてもらい、担い手を生み出していきたい。現に、オープン後一緒に働きたいという若い人も出てきました。地場産業をブラックボックスにせず、見える化していくことが大切だと思っています。

かつてお殿様が過ごした落ち着いた間で、コーヒーを飲みながら過ごす時間は格別

-未来

これから新幹線が通ったり状況も変わってくる中、まちが荒れないよう守っていくのは、小浜に暮らす自分たち。小浜に生まれ育った人間と、小浜に魅力を感じて移り住んできた人間が関わりながら、小浜の価値を作り上げていくことが必要です。GOSHOENで箸の職人や工芸、文化の価値に触れる機会を作り、既存の価値を再認識したり発掘したりする。自分たちだけで進むのではなくて、学校や地域と共有しながら面にしていき、若い人たちが戻ってきたいと思うようなまちづくりをしていきたい。

価値を感じたものに投資をする勇気を持つことが大切。やらない方がもちろん楽ですが、それでは未来はついてこない。GOSHOENは本業の価値を発展するために必要な表現としての投資です。企業としてできることをしっかりと意識し、これからも産業と地域の未来へのかけはしになっていきたいと思っています。

Information

WAKASA RENOVATION STANDARD
STANDARD-02 GOSHOEN

江戸時代(1815年)に北前船の商人「古河屋」が藩主や賓客をもてなすために建築された迎賓館をリノベーション。コーヒースタンドやコワーキングスペース、ショップスペースを備え、ゆったりとした贅沢な時間を思い思いに楽しむことができます。2022年秋には若狭塗ミュージアムとギャラリーもオープン予定。

〒917-0002 福井県小浜市北塩屋17-4-1
TEL 0770-64-5403
WEB https://goshoen1815.com
営業時間 10:00-17:00
定休日 水曜日・木曜日
駐車場 あり

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