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『幻の白い筍〜小浜が誇る名産品として今に生きる』御食国の現場から vol.03

勢(せい)の筍を知っていますか?昔は近畿周辺で「白たけのこといえば勢の筍」と称されるほど、名高い特産品でした。最盛期には多くの筍農家があり、収穫量も豊富で、近隣のまちに売りに行くほどだったそうです。
3月下旬から4月下旬までの約40日間の間しか採れない貴重な春の味覚。かつては小浜市民にも親しまれており、宿泊客が筍掘りを体験できる民宿もこの地域に点在していたそうです。しかし、後継者不足や高齢化などの影響で、今では本格的に筍農家として筍を採っているのは岡弘さん一人だけとのこと。

岡さんの生産現場に向かう道中、いくつも民宿らしき看板の跡を目にしました。きっと、以前はこのあたりで、宿に泊まり筍収穫を楽しむ春の風景が広がっていたのでしょう。岡さんに会うまで、筍は山で自然に生えてきたものを収穫して売られているものだと思っていたので、筍専門の農家さんがいるのだとちょっと不思議な感じでした。

しかし、岡さんから「良い筍が生えるよう親竹を切って地上に太陽の光が入るように手入れをしている」と、お話を聞き、整備された山を見せていただいて、その認識が変わりました。
良い筍を育てるためには、親竹を間引き、地上に太陽の光を入れる手入れが欠かせません。適度な空間が開けられて、すっと空にのびのびと生える竹。岡さんの整備した山は、素人ながら筍がすくすく育ちそうな気持ちよさそうな環境だと感じました。

筍の成長を考えて整備された山。竹同士に適度な間隔があり、山肌も明るかったです。

ただ、伺わせていただいた今年は、豊作の次の年によく起こる“裏年”の中でも特に獲れない年だそう。そのため、収穫体験は出来ませんでしたが、奥様が収穫のお手伝いに来られていた方々と筍料理を作られていて、「せっかく来たのだから筍料理しかないけど食べていって」と、貴重な筍をふるまっていただきました。

最初に出てきたホイル蒸しされた筍の甘い香りは忘れられません。
蒸しただけなのにびっくりするほど灰汁がなく、柔らかくて甘い!岡さんに一番好きな食べ方は?と聞くと「若竹煮が一番やなあ」と即答。その日は、若竹煮やしゃぶしゃぶなど様々な筍料理をいただいたのですが、私のMVPもやはり若竹煮でした。

MVPの若竹煮。獲れたての筍はやわらかくてほくほくと甘みがあり手が止まらないおいしさです。

また、出荷の際にも岡さんのこだわりがあります。収穫してすぐ次の日などに出荷できない場合は、生で出荷まで置いておくのではなく、茹で筍にしてよりおいしい状態で届けるのです。筍の茹で方は、奥様が長年の経験で大きさや硬さによって調整しているそう。私たちのもとに届くまでに、これほどの手間と愛情が込められていることに感謝せずにはいられませんね。

筍を茹でるのは奥様が担当。来年はおいしく茹でるコツを教えていただきたいです!

小浜には、こんなおいしい筍があり、そんなおいしい筍を守り続ける農家さんがいます。しかし、後継者がいない現実があることも知ってほしい。この先も、この味がずっと残ってほしいし、残したいし、守りたい。そのためにも、もっと多くの人に「勢の筍」を知って欲しいです。
来年はたくさん獲れますように。まだ食べたことがない人も、食べたことがある人も、ぜひおいしい「勢の筍」を味わってみてください!

白筍というのは下の根っこまで真っ白だから。こんなきれいな筍をこれからも小浜で食べたいですね。
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安間 七菜

1997年福井県福井市生まれ。管理栄養士。大学卒業後は福井県の栄養教諭として勤務後、小浜市の豊かな食材や食文化を学ぶため2024年4月から小浜市地域おこし協力隊に。ナチュラルワインが好きで、食べることも作ることも大好き。日々小浜の食の豊かさを実感しながら、日々家で料理をしている。小浜市の食の魅力を発信していきたいと思っている。

  1. 『幻の白い筍〜小浜が誇る名産品として今に生きる』御食国の現場から vol.03

  2. 「小浜の誇るおいしい魚の流通は、ここから始まる」御食国の現場からvol.02

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