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年末年始に箸を取替え!『新年!若狭塗箸お取り替えキャンペーン』が開催されました。

小浜市の誇る伝統的工芸品『若狭塗』の技法を応用した『若狭塗箸』

螺鈿に卵殻、そして金箔。漆黒の漆の中に散りばめられたそれは、光に照らすと美しく輝きを放つ。小浜市の伝統工芸である「若狭塗」は若狭湾の海底模様を模して作られたのが起源だと言われている。     

幾重にも漆を塗り重ねてから研ぐことで、美しさと強固さを併せ持つ日本の伝統的工芸品にも指定されている「若狭塗」。その技を箸に応用したのが「若狭塗箸」。若狭塗箸産業は、400年以上の長い歴史を持ち、国内の塗箸生産シェア7割以上を誇る小浜市の重要な地場産業のひとつ。

私たちの暮らしに様々な影響をもたらしている新型コロナウィルス感染症。その影響は箸産業にも及んだ。     

全国百貨店の営業停止や外出自粛による販売機会の損失、外国人観光客の減少によるお土産売場などでの販売低迷が深刻化。この状況に、小浜市と「若狭塗箸協同組合」は、落ち込む地場産業を盛り上げるため、『新年!若狭塗箸お取り替えキャンペーン』を実施。     

コロナ渦でおうちごはんの機会が増え、自宅で箸を使う機会も増えていることから、年始を新しい箸で心地よく過ごしてもらおうと「新年は新しいお箸で」をキャッチフレーズに、自宅で使用した箸をキャンペーン実施施設に持参すれば若狭塗箸と無料で取替えしてくれるといったキャンペーン。

年末年始の令和2年12月1日から令和3年2月19日の期間に行われ、実際に箸を使用してもらうことで若狭塗箸の持つ「伝統と機能性を併せ持つ魅力」を感じてもらうだけでなく、新年にお箸を取り替える習慣を発信するのも狙いだ。キャンペーンは小浜市内の「箸のふるさと館WAKASA」「道の駅若狭おばま」の2箇所に加え、県内では福井市の「福井市観光物産館福福館」、県外では東京の「福井県アンテナショップふくい南青山291」、大阪の「福井県大阪事務所」、山形県鶴岡市の計5ヶ所。山形県鶴岡市は、同市が小浜市と同様食のまちづくりを行っている繋がりからキャンペーン実施を依頼し、食の関係者に対して取替を実施した。

小浜市内店舗では、3,119人の8,529膳。市外店舗では、2,382人の6,471膳、合計5,501人、15,000膳の取替を実施した。特に福井市の「福井市観光物産館福福館」では反響が大きく、キャンペーン開始から1週間で取替予想数を超え、取替終了となったそうだ。

子どもから大人までたくさんの人が取り替えに訪れた

キャンペーンに参加された方は、40歳以上の女性が大半をしめ、箸を大切な生活道具と捉えていることが分かる。     

市内や福井市で参加された方達からは「地元のものを大切に使いたい」と産業を応援する声が多数寄せられ、「贈ることはあっても自ら使う機会はなかった」など地元のものに改めて目が向くようになったという声も。

県外でのキャンペーン参加者は若狭塗箸の存在を初めて知る人も多く、「次はぜひ購入したい」と言う声も聞かれた。参加者の中にはキャンペーンをきっかけに小浜に興味を持ち、状況が落ち着いたら「小浜にも遊びに行きたい」と言ってくださる方もいたとのこと。

キャンペーンが単に箸を交換するだけで終わるのではなく、ものづくりの担い手を応援する気持ち、産地への興味につながるきっかけになるのだと認識させられる。

このキャンペーンの最大の特徴は、ただ箸を配布するわけではなく今まで使っていた箸と「取替」するところ。

「お箸は無下に捨てにくい」「お箸はどこにでも捨ててはいけないと教わった」と使い古した箸を持参する人も多く、「長年使った愛着のあるものを手放すきっかけになった」と箸がただの道具ではなく特別なものだという意識が感じられた。

市内の人にとっても、箸を改めて“選ぶ”という機会は新鮮だったのでは?!

みなさんは、小浜市で8月4日に開催される「箸まつり」をご存知だろうか?

「箸まつり」とは「若狭塗箸協同組合」が毎年8月4日に実施している行事で、行事中には日頃使用してきた箸に感謝の気持ちを込めて供養をする「箸供養」が行われる。箸供養の際は小浜市内だけでなく、全国の「箸を供養してもらいたい」という方達から送られてきた箸がお焚き上げされる。

毎年8月4日に行われる「箸蔵神社」での箸供養

今回のキャンペーンで集まった使用済みの箸もこの箸供養の日に供養されることから「安心して交換してもらえる」と訪れた理由を話してくれる方も。交換にあたって改めて使っていた箸を見ると傷んでいることに気づいたと言った声や、今まで使ってきた箸に「毎日お世話になっているお箸、細いからだで頑張ってくれてありがとう」などと感謝の気持ちを述べる声、「どれにしようと選ぶワクワク感を久しぶりに味わえた」と箸を選ぶ楽しさを改めて実感した声などが寄せられ、キャンペーンが箸に意識を向けるきっかけになったことが分かる。

外出の機会が減り、家で過ごす時間が増えた。この状況下でどう暮らしを充実させようか、多くの人が考えていることだろう。改めて自分の身の回りを見渡してみると、今まで意識を向けて来なかったものが目に飛び込んでくる。お箸もそのうちの一つじゃないだろうか。

普段あまり気に留めない暮らしの道具にも、いざ新調してみると気持ちを上向きにしてくれる力があるように思う。道具を改めると自ずと今まで使っていたものへの感謝が湧いてくる。それも気持ちをすっきりとさせてくれる要因かもしれない。いつまで続くかわからない不安の渦の中だけれど、生活を楽しくする方法は案外近くにあるのだと感じた。

今回実施された『新年!若狭塗箸お取り替えキャンペーン』も、いつも使っている箸に感謝する気持ちなど、改めて身近な生活道具・箸に意識を向ける大きなきっかけとなった。

そして、「地元のもの」を使用する喜びや、ものが作られる背景を知って購入することで得られる愛着を生んでいるように感じられた。1年に1回新年に、箸に感謝して交換する。「新年は新しいお箸で」を合言葉に、全国に誇る塗箸産業の地小浜市から、この習慣を日本の新しい文化として広げていけたらどんなに面白いだろうか。

text by 嶋田愛梨, editing by 堀越一孝

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