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2023年の地蔵盆。3日前の朝、おばま化粧地蔵の様子を見に行ってみた。

小浜の8月23日といったら、ぼくが2017年に出会って一目惚れしてしまった地蔵盆
新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年から去年まで祭りは自粛された。だから、今年は久しぶりに地蔵さまたちもスッキリと化粧直しされてみんなの前に祀られる。

子どもたちがお化粧する愛らしい小浜の化粧地蔵

地蔵盆の3日前の朝、地区を歩くと祠を留守にする地蔵さまがいたり、すでに地お化粧を落とされていたり、昨年までとは異なりさまざまだった。


昔はほとんどの家が漁師だった西津エリア。各家から海の様子を眺めることができるよう、海から一直線に筋が通っている。筋ごとに家が建ち、それぞれの町があった。各筋にある共同井戸には地蔵さまが祀られ、今のように高性能な船で出航するわけではない時代、漁の安全と大漁を毎日地蔵さまに祈っていた。
小浜の西津エリアに地蔵さまがたくさんいらっしゃるのは、その名残。そして、地蔵さまを大切にするのも。

筋を抜ければ海。探すと筋には必ずと言っていいほど地蔵さまがいる

地蔵盆では、地蔵さまを地蔵堂という小屋を建てて祀っていた。今は地区の会館でやることがほとんどだが、2019年の時点では2地区の地蔵堂が残っていた。しかし、今年からその地蔵堂に出合うことはできない。
地区の高齢化と、地蔵堂の老朽化。傷んだ地蔵堂を修繕したとしても、地区の子どもたちが減少し、大掛かりな地蔵堂を毎年建てるのは困難になった。

2018年に撮影させていただいた七軒町の地蔵堂。被写体となってくれた方には、いつも大変お世話になっている。

以前からお世話になっている七軒町。今年は初めて地蔵堂を建てずに地蔵盆を迎える。地区内にある車庫を借りて祭壇を設置。たまたまその現場に立ち会えたのには、縁を感じられずにはいられない。寂しくないと言ったら嘘になるが、それでもしっかりと地蔵盆を大切にし、向き合うみなさんの姿はとても素敵だった。

祠を祭壇用の車庫に設置する

「うちを含め残っていた2地区のうち、隣の地区の地蔵堂は処分されてしまった。なんとかうちは建てようとも思いましたが、人的問題もあって建てることはやめることにしました。でも、まだ地蔵堂の材料は残しています。うちの地蔵堂は明治に作られた貴重なものでもありますし」
いつもとは勝手がちがう祭壇の祀り方。地区の方達は試行錯誤しながら必死に準備をしていた。

明治時代に作られたことを物語る箱には「若狭国」や「西津村」の表記も

小浜に関わるようになって、毎年見つめている地蔵盆。たった7年間でも風景はどんどん変わる。地区に生まれた待望の子どもは、大きくなって走り回るようになっていた。逆に、会えなくなった人もいる。
今年の地蔵盆は、どんな風景に出会えるのだろう。いつ祠を見てもきれいなお茶と生花が飾ってある、おばま化粧地蔵。覗くたびに化粧や前掛けが変わっていて、ここでしか見ることができない雅な地蔵さまにはいつも感動する。
8月23日は小銭をいっぱい持って、西津エリアをお参りお散歩されてはいかがですか。

祠の設置を待つ地蔵さまは「今年はどうなりますかね?」と、相談しているかのようだった

ある意味貴重なお留守祠コレクション

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堀越 一孝

堀越 一孝

フォトグラファー。デザイン事務所UMIHICOの代表。

1982年神奈川県川崎市出身、小浜市在住。 小浜の伝統産業である塗箸の老舗「株式会社マツ勘」で商品企画や広報を行いながら、デザイン事務所UMIHICOの代表をしています。 本職は、フォトグラファー。2014年より写真でまちを元気にする新しい写真の方法『ローカルフォト』を核としたプロジェクトで日本各地をぶらぶらしています。

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