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「小浜よっぱらいサバ」の種苗搬入に遭遇!

久しぶりに訪れた田烏の釣姫漁港。平日にも関わらず、堤防にはたくさんの釣り人。海に近づき水面を覗くと、小さな魚がたくさん泳いでいた。この日は、新しく着任した水産事業者を目指した地域おこし協力隊の取材。「養殖業の勉強をしたくて小浜に来ました」と、高校卒業してすぐの若々しさ溢れる言葉に感動していると、堤防に人が集まってきた。

リアス式海岸の恩恵もあり、水産物の養殖が盛んな小浜。若狭フグや若狭まはたなどのブランド養殖魚とともに、小浜を代表する「小浜よっぱらいサバ」。みなさんはこの小浜よっぱらいサバがどのように小浜に来て、育てられているかご存知でしょうか?

堤防に人が集まる中、とても長い荷台のトラックがやってきた。取材を終えて近くに行くと、小浜よっぱらいサバを育てる「田烏水産株式会社」代表の横山拓也さんに話を聞くことができた。
「今日は、瀬戸内海家島諸島の坊勢島で巻網漁をしている『大漁丸水産』という船団から来たサバを、いけすに搬入します」

「田烏水産株式会社」代表の横山拓也さん。


トラック(活魚車)が付けられた堤防沿いの岸壁には毛布が敷かれ、足元にいけすが寄せられていた。そこに集まっていたのは田烏に暮らす方や田烏水産の方だけではなく、県庁職員や市役所職員、福井県立大学、魚の流通に関わるなどさまざまな方。

トラックのコンテナに横山さんを含め4名が登り、いけすに2名が腰掛け、間に6名が並んだ。きれいな列ができると「いきまーす!」の声と共に、水の入った白いカゴがコンテナに設置された水槽から運ばれてきた。バケツリレーの要領で、少し水をこぼしながらいけすまで運ばれるカゴ。何が入っているのかと近くで覗いてみると、虎模様がはっきりと美しいサバが跳ねていた。

カゴからもしもサバが跳ねてしまっても傷つかないように、いけすまでの道には毛布などが敷かれている。

「3!4!」
白いカゴとともに大きな声。中継者の横では、いけすに運ばれたサバの数をカウントしていた。一匹一匹、大切にサバを運んでいるのだ。搬入と聞いた時、トラックから太いホースか何かでドーッ!といけすにサバを流し込むものだと思っていた。

美しく元気なサバ。これから若狭の海で「小浜よっぱらいサバ」として育つ。

「サバは傷みやすく、とても繊細です。一気に流し込むとショックを受けて死んでしまうこともあります。このサバを運んできてくれた大漁丸水産は、煮干の原料となるカタクチイワシなどが本業。実は、煮干の原料は鮮度が重要で、生きたまま煮干工場まで運ばなければなりません。だから、煮干製造文化のない日本海中部や北陸各県などが持っていない、魚を生かして運ぶ技術に長けた大漁丸水産の信頼できるサバを大切に搬入しています」
小浜よっぱらいサバは、酒粕が混ぜられた餌や美しい若狭湾で育てられたという、小浜に来てからの環境に注目されているが、ここに来るまでについてもしっかりと考慮されている。

大切に受け渡されていくサバの種苗。水が適度に溢れるように、中が見えるようにと、色々と工夫されている。

「いけすで約3〜4ヶ月育てて、このサバたちは小浜よっぱらいサバとして出荷されます。ただ、いけすに入ってから、わずか2週間ほどで田烏の味になるんです。これは、透明度が高く美しい若狭湾の海水がそうさせると考えられます」
トラックの荷台で、半身を水中に浸け何度も何度も白いカゴでサバをすくう横山さん。そして、そのすくった数だけ続くいけすにサバを迎えるバケツリレー。この日は、2,127尾ものサバが“小浜よっぱらいサバ”となるべく小浜に引っ越ししてきてくれた。

長時間続く荷台からのすくい上げ運動。この日は暑かったこともあり、相当大変だったに違いない。

たまたま見ることができたサバの種苗搬入。小浜よっぱらいサバは、小浜という自然環境で育てられるだけではなく、何事にも真摯に向き合う育てる人や支える人たちの丁寧な想いが詰まった、小浜らしいブランド魚だ。

サバが搬入されたいけすが飼育場に移動される。この搬入も時期をずらし、年間7〜8回実施するそうだ。

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堀越 一孝

堀越 一孝

フォトグラファー。デザイン事務所UMIHICOの代表。

1982年神奈川県川崎市出身、小浜市在住。 小浜の伝統産業である塗箸の老舗「株式会社マツ勘」で商品企画や広報を行いながら、デザイン事務所UMIHICOの代表をしています。 本職は、フォトグラファー。2014年より写真でまちを元気にする新しい写真の方法『ローカルフォト』を核としたプロジェクトで日本各地をぶらぶらしています。

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