お話を伺ったのは、2008 年から小浜市福谷にて工房を構えている「KEiS 庵」の庵主である竹田恵子さん。竹田さんは KEiS 庵を立ち上げる以前は小浜市役所で働いていたが、旅行で訪れた石垣島で琉球ガラスと出会い、その美しさと製作工程に魅了されガラス工芸の道へ進むことを決心した。
通常ガラス職人になるためには長期間の修行が必要で、ガラス吹き竿を触らせて貰えるようになるまで 5 年以上かかることもざらにあるという。しかし竹田さんは師匠と二人きりの環境で修行にのめり込み、ガラスの造形技術はもちろん、素材による発色の違いや炉の温度管理などガラス工芸についてあらゆる技術を叩き込まれた。その結果、3年という期間でガラスの扱いを習得した。
KEiS 庵の提供する“ OBAMA blue ”は竹田さんが試行錯誤の末 2022 年に完成した小浜の海をイメージした緑がかった青色のガラスだ。このガラスの原料には小浜の砂浜から採取した珪砂や若狭牡蠣の殻、そして小浜よっぱらいサバの骨が使われている。ガラス職人が原料である珪砂を独自に採集する例は世界的にもほぼないと言われていることからも、竹田さんの OBAMA blue にかける情熱が伝わってくる。
小浜の海は、季節や時間帯によって色を変化させる。OBAMA blue の原料の一つである珪砂もまた海流などの影響を受けるため、その時々で違ったニュアンスの青色を呈する。そのため小浜の海をイメージした OBAMA blue にも決まった色はいらないと庵主の竹田さんは語った。
今後の方針について竹田さんは、「OBAMA blue を作ることには成功したが、まだ産まれたばかりの赤ん坊である」と言い、OBAMA blue についての情報発信や様々な意見を取り入れることに力を入れていくと語る。
「ここへ来て、小浜の海を持って帰っていただければと思います」そう言ってこの会話を締め括った。
もちろんKEiS 庵には OBAMA blue の他にも、琉球仕込みの鮮やかで綺麗な食器や酒器が並んでいる。見た目に美しいガラスに囲まれながら、実際に手に取ってみてはいかがだろうか。
福井県立大学 伊関奏汰
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