「御食国 若狭小浜小鯛ささ漬 History発掘プロジェクト」はじまる!

小ぶりな杉の樽を開けると、中には美しいピンク色が輝き、うっすらと酢の香りが鼻孔をくすぐる。小浜市内に暮らす人なら、この説明だけでなんのことかすぐに分かりますよね?

小浜市を代表する特産品「若狭小浜小鯛ささ漬」(以降、小鯛ささ漬)。2017年には、地域で長年培われた生産方法や気候・風土などの特性により高い品質と評価を獲得した特産品に与えられる「地理的表示(GI)保護制度」にも登録された、名実ともに小浜を代表する特産品のひとつです。

でも、その小鯛ささ漬について、味や見た目以外で語れる人はどれだけいるでしょうか。どのような歴史背景から生まれ、今の形になるまでどんな変遷を経てきたのか。現在、市内で11社がつくっている小鯛ささ漬。製造方法はどこも同じなのでしょうか。

知っているようで、知らない小鯛ささ漬。その謎を解き明かすプロジェクトが立命館大学の食マネジメント学部とともに立ち上がりました。
その名も『御食国 若狭小浜小鯛ささ漬History発掘プロジェクト』。

すっかり真っ青な秋空が広がるようになった10月30日の朝。「若狭小浜お魚センター」前に、立命館大学 食マネジメント学部の南直人教授と12名の学生が集まり、プロジェクトの初回が開催されました。
このプロジェクトの主催は、小浜市文化交流課。御食国小浜の食文化にたくさんの人に関わってもらい、知ってもらうための発信事業の一環です。

プロジェクトは晴天の「若狭小浜お魚センター」前からスタート!

新型コロナウイルス感染症の影響による緊急事態宣言なども解除され、駐車場にはたくさんの県外ナンバーの自動車。数ヶ月前と比べて「若狭小浜お魚センター」は、たくさんのお客さんで賑わっていました。
そんな中でも、学生たちは初めて見る若狭湾で上がった多様な魚をしゃがんで覗き込んだり、実際に販売されている小鯛ささ漬について店員に積極的に質問。

集まった学生の出身地は全員福井県外で、小浜市に訪れるのもほとんどが初めてとのこと。この日はまず小鯛ささ漬を中心とした小浜市の食文化と風景を見学することが目的です。

御食国若狭おばま食文化館」で、古代から塩や海産物などの豊富な食材を都に運んだ御食国としての歴史が小鯛ささ漬や、鯖のへしこ、なれずしなどの加工技術を発展させたことを学び、全国で小鯛ささ漬を販売する「小浜海産物株式会社」では、小鯛ささ漬の製造工程を映像で見学しました。

「御食国若狭おばま食文化館」の豊富な展示と学芸員の丁寧な説明に、学生たちは真剣に耳を傾けます
小浜で小鯛ささ漬を最も生産量する「小浜海産物株式会社」に訪れ、社員の方から製造への思いや、こだわりをお聞きしました

「小鯛ささ漬はなぜ生まれたのか?」
「なぜ“ささ”漬と呼ぶのか?」
「杉の樽はどこでつくっているのか?」
「地元の人はどうやって食べているのか?」など、学生たちからの質問は、どれも今後のプロジェクトで明らかにしていきたくなるものばかり。

学生たちからは、これからの探求のヒントを探るかのような積極的な質問が次々と

午後からは、小浜市の誇る食文化の現場へ。
「どうぞ、いらっしゃーい!」と、明るい声で迎えてくれたのは「有限会社 上杉商店」の上杉明子さん。
上杉商店は、昭和33年より小鯛ささ漬の製造を開始。江戸時代に築かれた小浜城の面影を感じる石垣と海、川に囲まれた静かな住宅地の中で、ささ漬一筋50年以上の小浜を代表する製造会社です。

初めての小鯛ささ漬の現場は「有限会社 上杉商店」

社長の上杉耕一郎さんに会社の概要を受けた後、製造工場の中へ。たくさんの小鯛の切り身を丁寧に詰める人、丁寧かつ瞬時に小鯛を三枚に下ろす従業員の方々。序盤、その光景に学生たちは圧倒されていましたが、次第に目の前に広がるプロの技の数々に、遠慮を好奇心と探究心が勝っていきます。現場ならではの作業道具や捌いた後の処理のことなど、その場で感じた質問を従業員の方々にインタビューしました。

工場見学の後には、上杉商店のinstagramなどで小鯛ささ漬の調理アレンジなどを発信されている上杉明子さんの小鯛ささ漬料理をいただきました。この時まで小鯛ささ漬を資料や目でしか味わってこなかった学生たちからは「想像よりも繊細な味!めっちゃ美味しい!」と興奮の声。

美味しい小鯛ささ漬の魅力を認識したら、小浜の加工食文化のひとつ「へしこ」の製造現場「民宿佐助」の森下佐彦さんの元へ。
小浜湾沿いを北に走り、先程までとは雰囲気の異なる海エリアである田烏(たがらす)。かつて巾着漁と呼ばれる漁法により、日本でも有数の鯖水揚げ地域であったこともあり、田烏には鯖を加工したへしこ・なれずしの発酵食文化が息づいています。
その歴史や加工方法について、森下さんに丁寧に紙芝居でご説明いただき、へしことなれずしを味わいました。

「民宿佐助」の森下さんの名人芸とも言える「へしこ紙芝居」で小浜の誇る発酵食を学びます

「へしこの塩気は普段口にしているただしょっぱいだけとは違って、クセになりますね。なれずしはとても食べやすくて美味しい!」という意見や、「小鯛ささ漬の生を長く味わう目的とは違って、へしことなれずしは加工後の味を楽しむものですね」といった食文化に関心のある学生ならではの意見も。

へしこを製造している佐助自慢の押物小屋の樽から、今年仕込んだものと13年もののへしこを特別に味合わせていただきました

この日の終わり、学生になぜこのプロジェクトに参加したのか聞いてみると「私は元々地域活性化に関心があって、食は地域の特色を表すのに欠かせないものだと思っています。それなのに、地域に根ざす伝統的な食文化は減っていく一方だと聞いて、今回のテーマである『若狭小浜小鯛ささ漬』のようなものがなくなってしまうことを防ぐお手伝いができるなら、やってみたいと思って」と語ってくれました。

陽が傾くまで初めての小浜食文化にたっぷり漬かった学生たちと森下さん

2001年に全国初の「食のまちづくり条例」を制定し、今も御食国の背景と豊富な食材に恵まれる小浜市。この歴史や資源をもう一度見つめ直し、小浜ならではの未来を考える。
もちろん、それには外部の人間だけではなく、市民も一緒になって考えながら進んでいくことが必要です。その検討のための調査を、これから学生たちが小鯛ささ漬を通して進めてくれます。きっと、小鯛ささ漬が生まれた背景やここまで名産品として育まれた歴史に未来のヒントがあるはずです。

このプロジェクトは、これから約1ヶ月に一回のペースで進められます。2月には調査の中間報告も兼ねた誰でも参加できるシンポジウムも開催予定。
他人事ではなく、小浜に巣まうみんなにとっての自分事として、このプロジェクトを見守っていきましょう!

これから、この学生たちが若狭小浜小鯛ささ漬に隠されたHistoryを発掘していきます!お楽しみに!

text&photo:UMIHICO 堀越一孝

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です