小浜駅から国道27号線を東に進むと、「す」という看板が印象的な蔵屋敷風建物の「とば屋酢店」がある。ここは、昔ながらの製法で酢を作り続けている。
店内を抜けて酢を造られている工場へ行くと、酢の香りの特徴的である鼻をツーンと刺す香りが工場内に満たされていた。とば屋酢店は、300年前と変わらず昔ながらの製法で籾殻を保温材として活かし、壺の中に米麹と水を用いて酢を作っている。この製法を使う酢店は、全国でも珍しいそうだ。
とば屋酢店の自慢の酢は「壷之酢」。普通の酢は、ツーンとした強い酸味が特徴的。しかし、「壷之酢」は代々受け継がれた昔ながらの壺を使用し、2ヶ月以上静置発酵させることで醸造される。するとツーンとした酸味がなくなり、他の酢にはないコクとまろやかさ、独特の風味を醸し出すことができるという。
実際に「壺之酢」を口にしてみると、風味がとてもまろやか。普段使っている酸味の強い酢とは全く違うものだった。
創業当時から現在までの酢と小浜の関係を聞いてみると「江戸時代の頃から小浜の特産品である若狭小浜小鯛ささ漬などの繊細な味を引き立てる調味料には、とば屋酢店の酢が今も使われている(全ての店舗ではない)」とのこと。
「壺之酢」のようなお酢そのもの以外にも、ポン酢や和風ドレッシング、そのまま飲むことができるお酢蜜など、様々なお酢を製造している。また、海外にも輸出しており、フランスなど様々な国でとば屋酢の酢が売られているそうだ。
予約制の醸造所見学も行っているので、普段味わえないお酢が作られる現場に、一度出会いにいってみませんか。
福井県立大学 宮崎 新
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