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「やさいをプランターで育てよう2021」から生まれた優しいコミュニティ

新型コロナウイルス感染症の拡大傾向も収まりつつある気配と共に、少しずつまちや人が動き出した。そんな10月23日(日)、小浜市のまちの駅で「やさいをプランターで育てよう2021収穫祭」というイベントが開催された。
会場に伺うと、小浜市の駅前にお店を構える「Bistro mouton」(ビストロムートン、以下ムートン)が生地から手作りしたピザを焼き上げ、木材と香ばしい小麦の香りを漂わせていた。まちの駅内にあるセレクトショップ「TEtoKI」の前では、地元野菜を多く取り扱う「赤井商店」が野菜をずらりと並べ、ちょっとした縁日のようだった。

会場となった小浜市まちの駅は、おいしい香りに包まれていた

イベントの主催者は、「TEtoKI」を運営するアンドプレイス合同会社。そして今回の収穫祭は、地域おこし協力隊の小山直紀さんが講師となって、プランターで野菜を育てるワークショップの最終回として開催された。

農家の担い手として小浜市で活動する地域おこし協力隊の小山直紀さん

初回の8月は、まちの駅で小山さんの自己紹介と実践している有機無農薬野菜の栽培の話から野菜づくりについて学び、土づくりと種植えをみんなで行うことで、これから育てるプランターを作った。
9月には、小山さんのクローバー農園を見学。雨上がりの畑に長靴姿の参加者みんなで入り、小山さんがどのように野菜づくりを行い、有機無農薬栽培ならではの苦労などを現場を見ながら聞くことができた。参加者は、プランター栽培で生まれた疑問や、畑で育つ野菜との生育状況の違いなど、自分たちで育ててみたからこその質問や見方をしているようだった。

小山さんは参加者の疑問質問に親身になって対応していた

小山さんは、もともと東京で飲食店に勤務していたが、自分で野菜を育ててみたいという思いから、小浜市の地域おこし協力隊に応募して、有機無農薬を中心とした野菜づくりを行っている。「実際に取り組んでみた有機無農薬による野菜づくりは、想像していたよりも虫の食害を受けたり、大変なことがたくさん。でも、現在も試行錯誤を重ねながら野菜づくりを楽しんでいます」と話していた。

「野菜づくりのハードルって、実はそんなに高くない。誰でも始めることができると思っています。だから、みんなにもそのことを知ってもらいたくて、今回のイベントを企画しました」と、小山さんは3回にわたるワークショップを実施した理由を教えてくれた。
ワークショップでプランターに選ばれたのは、「ルーツポーチ」と呼ばれるもの。小山さんの有機無農薬栽培に合わせ、リサイクル素材で作られた、エコなプランターを使って、安全安心、そして地球にも優しい野菜づくり実践するためとのこと。そして、ワークショップの内容は、講師の小山さんが一方的に手法を伝えるというようなものではなく、参加者と一緒にどんなことがしたいかを話し合い、考えながらやってきたそうだ。

ルーツポーチを使って育てられた野菜。ポーチということもあり、簡単に移動できるのも特徴。取手もついている

収穫祭では、参加者がTEtoKIのキッチンを借りてスープづくりを行っていた。
「今日のスープづくりも参加者のみんなで話し合ってやることになりました。ワークショップを始めた頃は、こんな収穫祭になることは予想していなかったです」と、参加者の山本久美子さんは、今回のワークショップがみんなで作り上げたものであることを話してくれた。
販売されていたのは、カレースープとクラムチャウダー。二種類とも本来捨てられる皮や茎などの部位から出汁をとり、動物由来の材料は使っていないとのこと。小山さんの実践する野菜づくりでは農薬を使わないので、出汁をとるのにも向いているそうだ。実際にカレースープを飲んでみたが、とても野菜だけの出汁とは思えないコクが感じられ、とてもおいしかった。

敦賀市から参加された山本久美子さん。みんなで作り上げるワークショップは楽しかったと話してくれた
野菜の旨味が濃厚に味わえるスープ。有機農法だから野菜を捨てることなく丸ごとつかえるのだとか

また、収穫祭ではみんなで育てた野菜をトッピングしたピザづくりも行われていた。ムートンが協力して準備したピザ生地に、みんな思い思いに野菜をトッピング。新鮮野菜が山盛りの彩り豊かなピザが仕上がった。
ピザ窯は地元箸メーカーの「箸蔵まつかん」が協力。箸の製造過程で出る端材を燃料にしたもので、手軽に本格窯焼きピザを楽しめる優れものだ。トッピングされた野菜もりもりのピザは高温の窯で香ばしく焼き上げられ、みんな美味しそうに頬張っていた。

もりもり野菜のピザ。食の安全安心を自分たちで育て、味わうことが収穫祭のメインイベント

参加者はみな女性で、小さなお子さんと一緒に参加している方もいた。参加者の一人に話を聞いてみると「やはり自分や家族が食べる野菜は、安全安心なものを使いたいから、今回の企画に興味をもった。農薬を使わないことで、虫がついて大変だったけれど、小山さんが対処方法を教えてくれたので、有機無農薬の野菜をうまく育てることができた。自分で苦労して育てた野菜の味は格別でした」と、ワークショップを通しての感想を教えてくれた。

最後に今回のイベント企画を主催したアンドプレイスの高野哲矢さんにお話しを聞いてみた。

「もともと小浜で有機農法を用いた野菜づくりをしている地域おこし協力隊の小山さんの野菜を仕入れてTEtoKIで販売していました。安全安心な野菜づくりを実践する小山さんの野菜のファンを増やしたいという思いと、自分たちでも野菜づくりに挑戦してみたいという思いから、小山さんに相談したことがきっかけです。あと、せっかくやるなら、同時に野菜づくりのコミュニティを作れたら良いと思って、今回のワークショップ企画を思いつきました。ワークショップ以外にもLINEグループを立ち上げて、参加者が野菜の成長過程報告や、野菜づくりの悩み事を相談したりできる場を設けることで、みんなで試行錯誤しながら野菜づくりを楽しんでもらえた」と高野さんは3ヶ月にわたって開催したワークショップを振り返った。
その言葉の通り、収穫祭のキッチンからは、参加者が和気あいあいとスープづくりを楽しむ姿を見ることができた。

「自分自身も野菜作りに興味があり、今回の企画を思いついた」というアンドプレイス代表の高野哲矢さん

一般的にイベントと聞くと、その日限りの集まりがイメージされがちだが、今回のイベントは「有機無農薬栽培の野菜づくり」という共通の興味を持った人たちが集い、自分たちでワークショップを作り上げながらみんなで楽しむというスタイルが印象的だった。小浜のような会いたい人に会いにいくことができるまちで、こうしたコミュニティの輪が少しずつ広がっていくと、小浜に暮らすことがもっと楽しくなっていくのではないかと期待してしまう和やかな企画であった。

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大場立春

大場立春

1987年小浜市生まれ。2016年に小浜にUターン。趣味は料理と狩猟。

1987年福井県小浜市生まれ。小中高と小浜で育ち、大学時代を北海道で過ごす。 東京で就職し転勤族を経験するも、第一子の誕生をきっかけに、小浜へのUターンを決意。 2016年より小浜復帰。趣味は主に料理と狩猟。同じく猟師をしていた父、祖父から学んだ自然との関わり方、楽しみ方を自身の子供にも体験させてあげるべく、日々子育てに奮闘中。

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