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「発酵された旨味」に出会うー角野さんのへしこ

「へしこ」という食べものをご存知だろうか。近年の発酵食ブームで、その名を聞いたことがあるという人もいるだろう。塩・米糠・唐辛子で魚を漬け込み1年の時間をかけて発酵させた保存食で、福井県の郷土食として知られる。福井県でへしこというと主に鯖を漬け込んだものを指し、県民にとっては最も身近な発酵食品である。しょっぺー味で最高のご飯のお供だ。しかし、一般に流通するへしこの中には発酵食品を装う「発酵風」のものも多い。旨味成分を添加し、発酵を省略する製法で作られたものだ。

この「へしこ」を伝統的な製法を守って作る人がいる。小浜市内外海地区矢代で民宿を営む角野高志さんだ。7年前からへしこ作りを始め、今では同市内の飲食店にも卸している。角野さんのへしこは塩・米糠・唐辛子以外のものは一切使用せず、食材の持つ本来の力を活かして作られているのが特徴だ。

工房にお邪魔すると作務衣を身を纏い職人の出で立ちで出迎えてくれた。取材日は7月末の真夏日で、工房内は立っているだけで汗が噴き出てくる暑さ。しかし実はこの暑さこそが発酵に最も重要なのだそうだ。冬の寒い時期に仕込むへしこは夏の暑さによって発酵を進め、旨味成分を蓄える。

一口いただくとそれはよく知るへしこのしょっぺー味とは全く違う。塩辛さはなく、舌に直接うまいと訴えてくるような味だ。角野さんは自身の思う理想のへしこも、塩辛さの無い鮭とばのような味だという。理想の味を追い求め、毎年塩の産地を変えたり、糠の比率を変えたりして実験を繰り返している。 

食材の持っている味を最大限引き出し作られる角野さんのへしこ。食べれば本当の発酵された旨味に出会えるだろう。

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嶋田愛梨

嶋田愛梨

とある箸メーカーで箸のある暮らしを探求中

1992年福井県鯖江市生まれ。大学生活をバリバリの計画都市で過ごす。その反動で「もっと人の暮らしが見える生活がしたい!」と思いが強くなり、卒業後は新潟のお米屋さんを手伝いつつ炊飯器を抱えて国内を旅をする。2017年夫の故郷である小浜に。今はとある箸メーカーで箸のある暮らしを探求中。

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