おばま化粧地蔵と僕

もしかすると、地蔵さまに導かれて小浜で暮らしているのかもしれない。

神奈川県のベッドタウンで生まれ、祭には無縁の人生を送ってきた。仕事で小浜に訪れた2017年の8月23日。たまたま訪れた西津地区で異様な光景を目にした。鉦と太鼓の音に合わせた呪文のような子どもたちの声。水鉄砲を持って走る子どもたち。道の真ん中に堂々と建っている小屋には笹飾りと鮮やかな色の旗。

写真は2018年に撮影したもの

小浜には『化粧地蔵』と呼ばれる地蔵さまがいる。名前の通り、お化粧された地蔵さまだ。関西では、京都を中心に「地蔵盆」が行われる。その開催日は毎年8月23日。僕がタイムスリップでもしたのか?と思った光景は、地蔵盆だったのだ。
地蔵さま(地蔵菩薩)は、子どもたちの無病息災を願う子どもの守り神。西津地区の地蔵盆は、主役となる子どもたちが準備から当日のお祭りまでとりしきるのが特徴的。まだ見たことがないのだが、23日より前に子どもたちは自分の地区の地蔵さまと祠を海へ運び、海水で1年間のホコリを落とすそうだ。その後、地蔵さまを天日で乾かし、地蔵さまに好きな色でお化粧をする。

最近は、子どもだけでは準備の手が足らず、大人たちが準備することが多くなってきている

この“好きな色で化粧をする”というところが普通であって普通ではない。僕は積極的に地蔵さまに触ったこともなければ、もちろん色を塗ったこともない。
歴史と文化に出合える街なんて言葉につられて小浜の街を歩き、街角の祠を覗くと、アバンギャルドな地蔵さまに出会っちゃう。笑っている地蔵さまがいれば、怖い顔の地蔵さま。頭だけの地蔵さまもいれば、伝統を守った雰囲気を持つ地蔵さま。そこらへんの石が化粧によって変身したであろう地蔵さま。とにかく、全ての地蔵さまがユニーク。
小浜市の方、ここにも日本遺産候補がありますよ!いや、世界遺産かもしれない。

バスキア?!と思わせるようなアバンギャルドな地蔵さま
昔はドラえもんにもなっていたことがある頭だけのインパクト抜群の地蔵さま
箸のまちならではの塗料で描かれたと思われる地蔵さま

小浜に暮らすようになり、この地蔵さまが地蔵盆の時だけのものではなく、日常で大切にされていることを知った。毎朝手を合わせる人がたくさんいる。前を通る度にお辞儀をする人もいる。お茶はいつも新しく、お花はいつも元気だ。玄関に「地蔵当番」という札がかけられている地区もある。僕は行儀が悪いので、自宅近くの祠に自転車に乗りながら会釈している。なんとなく、まだ正面に立って手を合わせたり、お世話をするなんて偉そうだと思ってしまうのだ。

生活どころか家の一部となってしまっている祠もある

本来なら、この場でそんな地蔵さまたちの晴れ舞台(?)である地蔵盆に訪れてもらうことを案内したいのだが、今年はコロナウイルス感染症の影響により祭りの開催は不透明(地区による)とのこと。
でも、小浜の地蔵さまには毎日会うことができる。僕は西津地区を歩く時、必ず地蔵さま調査をしながら遠回りをする。こないだは、半日で36もの地蔵さまに会ってきた。
祠には扉があるところもあるので、開けさせてもらう際には地域の方に一声かけたり、お賽銭を入れるなど、大切にされている地蔵さまだからこそ、来訪者に守ってもらいたいこともある。ただ、他のまちでは出会うことができないユニークな地蔵さまが小浜にはいるのだ。

住宅街にも突然現れる地蔵さま

地域の子どもたちが減ってきて、地蔵盆も縮小の方向にあるそうだ。子どもたちが自由にまちなかを走り回り、水鉄砲や水風船をぶつけて、お腹を抱えて全身で笑い遊ぶ。あんなに楽しそうな子どもの姿、なかなか見ることはできない。その光景を大人たちは微笑んで眺めている。最高だ。
この光景を守り、未来につなぐには、この光景に憧れる僕のような人を増やすことも1つの方法だ。こういったWebでの発信に加え、そろそろ『おばま化粧地蔵』散策を楽しむマップなどもつくりたい。地域の方に迷惑をかけずに、この文化を廃れさせないためにも。

まちなかを子どもたちが走りまわり、大人たちは見守る

最近、地蔵さまをファインダーから覗く度、「その写真どうすんねん?」と、言われている気がする。地蔵さまに招いてもらった小浜との縁なのだから、愛想を尽かされてしまう前に、お役に立たねばならないのだ。

こんな光景、素敵じゃないですか

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