1.小浜の植物工場と森田さん
小浜市街地から若狭西街道を西へ。視界の左手は一面の緑色に包まれ、右手には時々海の青が覗く山道の先に、斜面にそびえ立つ近代的な真四角の建物が見えてくる。
壁には「グー!」のポーズをしている野菜をモチーフにしたキャラクター。ここは、レタスやケールなどの葉物野菜を栽培している植物工場『ベジグー小浜植物工場』です。
「どんな人とお話しできるのだろう。正直、緊張しまくりで震えているけれど、楽しみ!」
はじめまして、京都大学経済学部を休学中の今井寛太です。
『Work INN OBAMA(仮)』が始まりました!
就活で人生初の挫折を経験し、これからの生き方を模索中の大学生が、小浜で働く人のお話を伺い、仕事の内容を深掘りしてみたいと思います。
今回訪れたのは、小浜市飯盛地区にある、『グローアンドグロー株式会社』のベジグー小浜植物工場。植物工場推進本部長の森田剛平さんに、お話を聞かせていただきました!
2.植物工場は今までもこれからも私たちの生活を守る工場
ベジグー小浜植物工場では、土を使わずに、水と養液で植物を育てる水耕栽培を行っています。肥料を溶かした養液を張り、LEDを用いた光量の調節から、温度や湿度、CO2濃度、室内の空気の流れに至るまで、最適にコントロールされた環境で植物を育てる。徹底管理された環境で、作りたい品質の野菜を作りたい量だけ、安定して効率的に作ることができます。
ここからは、私が感じた、植物工場の注目ポイントを3つご紹介します!
①食物危機から私たちの生活を守る!
近頃の物価高騰や社会情勢を見ていると、人間に欠かせない栄養素をいかに確保するかを考える必要性を感じます。
森田さんは「工場や設備まわりで培ってきたノウハウを活かし、他の機関とともに炭水化物と植物性タンパク質を安定供給する方法を研究中です」と話してくださいました。
これからの食生活を支える仕事を担えるのは、やりがいもあって魅力的です!
②実は、植物には無限の可能性が!?
環境管理によって、自然界とは違う栽培が可能になります。
露地での土耕栽培よりも植物が育つスピードを速め、また、特定の栄養素を通常より多く含むように作ることができます。しかも、農薬を使う必要もありません!
だから、安全・安心の野菜を計画的かつ効率的に作ることができるのです。
環境をコントロールできる強みは、植物にとどまらず、昆虫などの生育にも応用できる可能性があるそう。
③アルツハイマー予防に用いられる薬用植物の研究中
植物工場での仕事が、アルツハイマー病の予防に繋がる可能性があります。
例えば、レモンバームというハーブ。この植物に由来する成分(ロスマリン酸)にアルツハイマーを予防する効果があります。レモンバームを露地で栽培する場合、ロスマリン酸の他にも様々な成分が入っており、その中から欲しい成分だけを欲しい量抽出しようとすると、大量のレモンバームを作らなければならず、非効率的になってしまいます。そこで、環境コントロールによって、露地栽培よりもロスマリン酸を多く含むように『成分増産生』を行い、よりたくさんの予防薬を作ることができる可能性を追求して研究しているのだそう。
身近な人の健康を支えることもできる可能性も秘めている植物工場。
読んでくださっているあなたも、段々興味が湧いてきたのではないでしょうか?
次に、工場内部にお邪魔して、植物工場での働き方を見学してきました!
3.植物工場での働き方
いよいよ工場の中へ!
入るまでには5つの扉があります。これは、内部をコントロールされた清潔な状態で保つため。マスク、帽子、作業着で全身を覆う完全防備ですが、それほど苦しさを感じないのが意外でした。手洗い、消毒をしっかりしたら、最後に風でほこりを吹き飛ばします。工場内に異物を持ち込まないため、万全の体制です。
工場の中は、まるで近未来の世界に迷い込んだかのよう…!金属製の大きな植物プラントが目に飛び込んできます。太陽光代わりの電灯の白が、強くまぶしく植物の緑を照らし、どんどん成長を促します。
全身を作業服に包んだ従業員の皆さんが、丁寧かつ素早い手さばきで植物たちを操っています。室内環境は、暑すぎず、寒すぎず、植物だけでなく人にとっても快適な温度。
工場は、植物を育てる7つの大きな設備を中心に据えた大きな部屋と、収穫した野菜をパックに詰める部屋、野菜を保存しておく冷蔵室に分かれています。
種から育て始めたレタスは、35日でこんなに立派に育ちます。
気になる植物工場での働き方を伺いました。
従業員の方々が取り組むのは、主に以下のような作業。
・野菜の収穫
・パック詰め
・種植え
・栽培ボードの入れ替え
・清掃
・養液の成分調整
取材時には、栽培ボードの入れ替えが行われていました。
2人1組になって上段からボードを降ろし、長く成長した根を大切に扱いながら、新しいボードの穴に詰めていきます。1本ずつ正確にボードに配置していく作業は、正確さが要求され、最初のうちは手こずりそうです。1本試しにやらせてもらったのですが、ゲームのように集中力が必要でした。
「最初はちょっと難しいかも知れませんが、今となってはスポスポ入れていくことができます。ちょっと楽しいですよ(笑)」と、従業員の方が話す通り、経験を積んでスルっと入れる皆さんを見ていると、なんだか気持ちよさそうです。重労働というわけではなく、着実に作業をこなしていくのが好きな方や得意な方に向いていそうだと思いました。
そうして工場を見学しながらまわっていると、森田さんが不思議な行動に。
レタスがひねらずまっすぐ育つように注水口に指を入れ、養液内に酸素を混入させる森田さん。
「朝の5時からこうやってビャーっと酸素を入れてます。相手は生き物なので、これという正解がない中で工夫してみてるんです。これが効いているか自分でも実はよくわかっていません(笑)。でも、分からないからこそ、どれだけチャレンジできるかが大事やと思ってます」
従業員の方から「森田さんて、何してるんやろ?」と言われることもあるそうですが、日々探求を続け、細かい工夫を行っている森田さんの植物への愛と探究心がはっきりと伝わってくる瞬間でした!
4.お仕事を探している皆さんへのメッセージ
奥深くて近未来的な植物工場のこれからの先進的なお話を、コテコテの関西弁で話す森田さん。一方で、目を輝かせながら大好きな車の話をしたり、私の将来相談にも乗ってくださったり、人としての魅力に溢れている方。
これまでの私にとって『植物工場』は遠い存在だったのですが、森田さんの冷静な分析と熱い想いが共存したお話を伺い、みんなの日常を支えながら、将来を救う可能性も秘めている、植物工場の仕事の面白さを知ることができました!
「植物工場の強みは、環境をコントロールしながら植物の生産を管理できること。食物を安定供給したり、植物工場だからこそできる新たな植物栽培の可能性を追求したりするのが、これからの植物工場の役割やと思ってます」
と、森田さん。AIや機械による自動化が進んできたとはいえ、細かなところはやはり人の目で見る必要があるんです。
ベジグー小浜植物工場が求める人材はただひとつ「健康な人」。
日頃スーパーに並んでいる野菜を自分の手で作ることができる仕事。しかも、その野菜には農薬を使わないし、異物混入もなくて、安心できる、家庭の味方。それだけでなく、毎日安定的においしい食を届け、将来の食物危機に関するリスクから守ったり、病気の予防の一端を担ったりできる可能性があります。
これからも無限に使い道のある植物工場で、地道な工夫を凝らして自分の手でもっともっと面白くしていくことができて、やりがいがありそうな上に、生活の役に立つことができる素敵な仕事です!
「ここで森田さんと働いてみたい!」と思った方は、一度ご連絡を取ってみてはいかがでしょうか?
5.求人情報
仕事内容:レタスやケールなどの植物工場野菜の栽培や梱包に従事。
種植え
植え替え
収穫
梱包など
- 雇用形態:正社員・パート
- 年齢制限:定年を上限
- 学歴:不問
- 資格:不問
- 給与:応相談
待遇・福利厚生
- 加入保険等:雇用保険・労災保険
- 勤務地:917-0044 福井県小浜市飯盛80-1
- 就業時間:8:30-17:00
- 休日休暇:週休二日制
- 求める人物像:健康な人!
- 選考プロセス:面接
- ホームページ
6.あとがき
将来について悩んでいる。どうしたら良いのか分からない。
文字にすると「誰もが抱える悩みだね」と一掃されそうだけれど、正直自分では結構苦しい。
今まで「THE 優等生」の道をストレートに進んできた人生だったけれど、就活では全然上手くいかなかった。話の中で自分を魅力的にアピールすることがとても苦手だ。
そんなしんどい状況から抜けだしたい。と思って、唯一の取り柄である行動力を活かし、思いがけない縁で好きになった福井に住み始めた。ちなみに、福井は出身地でもないし、今までの人生で接点もほとんどなかった。あるアイドルと小説がきっかけになった。なぜ福井に住み始めたのか、というと、「福井の人たちが魅力的だなと思ったから」というのが一番大きな理由。小説の聖地巡礼から始まり、様々な機会で色々な人と出会い、お話しする中で、福井の人たちの素敵さを感じた。
昔から少し人に褒められてきた「文章を書くこと」で何か人の役に立てることはないかな、と考えていた中、小浜でNEST INN OBAMA編集長の堀越さんと出会った。
「以前働いていた上司からの受け売りですが、自分のメディアを持つことは魔法のじゅうたん。魔法のじゅうたんに乗れば、誰にでも会ってお話しすることができるでしょ」というお話を聞いたのが面白くて、「福井の人が好きな自分にとってめちゃくちゃ良いのでは…!!」と感じて、ブワッと鳥肌が立ち、バクバクと心臓の音が大きく、速くなった。
将来の仕事に悩んでいる、という点から、小浜ではたらく方々のお話を聞いて、それを記事にすることに。とてもワクワクすると同時に、とてつもなく不安でもあった。
そんな中、迎えた第1回がグローアンドグロー株式会社ベジグー小浜植物工場の森田さん。京大生という自分に興味を持ってくださっていたそう。
実際にお話ししてみると、自分の考えをしっかり聞いてくださった上で率直な意見をいただき、自分の至らなさを深く実感しながらも、「生きていく中で必ず壁にぶつかる。どんな方法でも良いから自分なりに工夫して、たくさんするであろう失敗から学びつつ、その壁の向こう側に行けたら良い」と、熱く背中を叩いていただきました。森田さんとお話しできて良かった。緊張もしたし、心身ともにエネルギーを使い果たした。
帰ったら、森田さんからいただいた、ベジグー産のケールをソテーにして食べてみた。ケールは苦味があると聞いていたけれど、独特の味が案外癖になるおいしさで、一瞬で食べ終えてしまった。
植物工場のとても先進的なお話をする一方で、ユニークなお人柄で、人としての器の大きさを感じる森田さん。途方に暮れるほどしんどいけれど、その分面白いのが人生と教えていただいたような気がした。この世界を生きていくことは、そんなギャップや意外性があるから、辞められないのかもしれない。
これからも、小浜ではたらく方々のお話を伺いながら、自分の将来を見つめていけたら嬉しいです。ぜひ、お付き合いください!
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