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また会いに行きたくなる「ゆるさと」へ。~小浜微住記 後編~

微住ならではの体験“タメづくり”

観光旅行では味わえない微住ならではの“贅沢な体験”として、「タメづくり」を滞在期間中何かしら行うようにしている。自分ができることやアイディアで地域やそこに住む人たちのタメになることを能動的に行う体験を通じ、微住者の地域への愛着に変えていく。
今回の小浜微住でのタメづくりとして、「GOSHOEN」の道を挟んだ隣の空き家で何かできないかと考えた。この空き家はマツ勘が西津エリアでの滞在拠点やコワーキングスペース、レンタルオフィスなどとしてこれからの活用方法を模索している物件。そこで今回の微住中にその最初の一歩をスタートさせようと、2階の一室に目をつけた。ちょうど窓からはGOSHOENも望める6畳間。見晴らしの良いところで、多少の掃除と畳さえ綺麗にすれば十分に寝ることはできる状態だった。
そこで微住中にGOSHOENとこの空き家を使ったイベントを開催し、それの収益で6畳分の畳を購入しこの空き家を“開床”しようと企画した。

『微Bar』オープン

それぞれが持ち寄った即席のアイデアが形になった『微Bar』

イベント当日、夕方の西津地区は最高に心地よい風が吹き、GOSHOEN前の通り続々と地元の人や嶺南のほかの市町の知人も集まってきてくれた。テーブルや椅子などを置き、「微Bar」をオープンした。
皆さんに召し上がっていただくのは、僕が微住中に美味しい出会いをした小浜の「微住メシ」。そして塗箸メーカーであるマツ勘にご協力いただき、お箸の検品の際に商品漏れとなったお箸を「微級はし」と名付けセットで提供した。

微住中、田中もマツ勘で検品作業のお手伝い

メニューの中身は初日に衝撃的な美味さで感激した田中家のお母さん特製のメンチカツをはじめ、若狭塗箸の会社「フナイワークス」の船井社長に会社見学のあとに連れていただいたローカル居酒屋「秀」でハマった雑魚の素焼き。そのほか西津の馴染みのお店になった「アップルハウス」特製のいかキムチ、そしてマツ勘会長お手製のだし巻き卵にラタトゥーユなど。「あそこの店のこれを選んだのか!」という声をいただきながら、小浜微住の思い出を語り合い、贅沢な時間は流れていく。


従来の旅では地元側からのおもてなしが当たり前に増えてしまうけど、微住ではお互いがおもてなしをし合うことで、地元の人たちとの距離はグンと近くなっていく。タメづくりによって「旅行者側と地元側」や「客と店」というように一方通行の関係ではなく、その向きをちょっと変えたり、双方向にしたり、立場を混じり合わせることで、普段は見えない地域の景色や味わいを双方で楽しむことができる。

無事に開床に成功!

おかげ様で見事に「微Bar」の売り上げで畳6畳分を達成。地元の子ども達にも手伝ってもらいながらみんなで2階へ畳を運ぶ。新品の畳の井草の香りがこの空き家の新たな息吹のように部屋に広がり、6畳間の“開床”は無事成功した。子ども達が新しい畳に寝転んで「今日ここ泊まるー!」とはしゃぐ姿がなんとも微笑ましかった。

畳が入った途端、みんなの部屋に

お金をかけて一遍に完成させてしまう方法よりも、時間をかけそのプロセスまでも色々な人を巻き込み、関係を作りながら一緒に作り上げていく。未完成を楽しむ余白のあるまちづくりは新たな可能性を生み、一つ一つのアプローチもお金で買えない贅沢な地域体験になると思う。

最終日の小浜の景色

微住最終日の小浜の風景は、初日とは全く違う眺めだった。
もちろん町が変わったのではなく、僕の小浜の町への愛着がその景色を変えたのだ。
今回お世話になったほりこしさんと松本さん、そして田中家の皆さんと商店街にある昔ながらの写真館で“家族写真”を撮った。とっても不思議な関係だけど、これからも関係が続く“シンセキ”の形だ。
滞在時間としては観光旅行よりも格段に長く、地域を深く味わったのに、むしろ微住すると満足しない気がするのは不思議だ。微住したからこそ、なんだか未完成で足りない感じがする。それはその地域をゆるさととして情が生まれた証拠なのだ。
微住は完了させない旅、一期一会ではなく、一期三会以上の関係を求めて。

老舗の「宮川写真館」にて小浜微住記念のシンセキ写真

小浜の皆さん、また会いに行きます。

職業 生活芸人
田中 佑典

福井県福井市出身。
アジアにおける台湾の重要性に着目し、2011 年から日本と台湾を行き来しながら、台日間での企画やプロデュース、執筆、クリエイティブサポートを行う“台日系カルチャー”のキーパーソンとして活動。
日本と台湾を行き来する中で、地方創生の方面にて福井発祥の新しい旅の形『微住®』を提唱。2018 年度ロハスデザイン大賞受賞。
2020 年、2021 年と徒歩で福井県 17 市町を巡る『微遍路』を実施。各地域での出会いやその 地域でまだ知らない魅力を発掘する様子が反響を呼び、各メディアにて取り上げられる。現在は福井県内だけに問わず、県外の行政ともタイアップするなど『微住®』の活動を広げる 一方、今後の未来で価値となり得る生活の考え方や暮らし方を様々な形で日々発信している。

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編集部

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NEST INN OBAMA編集部

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