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みんなの化粧地蔵

「まいってんの〜まいってんの〜まいらにゃとおさんぞ」
(参ってねー、参ってくれないと道を通さないよー)

毎年8月23日になると、子どもたちの”呪文”のような歌声が町中に響き渡る。

町内の道路を塞ぐように五畳程の地蔵堂が組み立てられ、地蔵堂の両脇には高さ4m程の笹竹に五色の色鮮やかな旗が無数に括り付けられている。これは小浜市内の西津地区を中心に行われる「地蔵盆」の風景だ。

地蔵盆当日の地蔵堂の様子

「地蔵盆」は町内各所にある祠の地蔵菩薩をお祀りし、子どもたちの無病息災を願う子どもが主役のまつり。近畿地方を中心に行われている地蔵盆だが、小浜市西津地区は全国的にも珍しい地蔵様に化粧を施す「化粧地蔵」で有名だ。他所から見ると”奇祭”の象徴のような化粧地蔵も、西津地区の人たちにとっては慣れ親しんだ日常の風景。

普段は町内の祠にお祀りされている化粧地蔵

しかし、地蔵盆も新型コロナウイルス感染拡大の影響により、ここ最近では中止を余儀なくされていた。
そんな中、西津まちづくり協議会が主催し、西津地区内42箇所123体の化粧地蔵を巡る「お地蔵さん歩スタンプラリー」が開催された。(本記事の取材は2021年11月3日)

「2年間地蔵盆が中止となり、このイベントを通して地域の誇りである化粧地蔵の魅力を地域の子どもたちに再認識してもらうとともに地区外の方にも広く知ってもらう機会にしたい。」そう話すのは西津公民館の竹田茂芳(たけだしげよし)館長。

化粧地蔵の魅力を語る竹田館長

竹田館長は西津地区で生まれ育ち、化粧地蔵に精通した言わば“化粧地蔵の伝道師”的存在である。これまでにも「地蔵盆のうた」の制作などを手がけ、地域の子どもたちとともに化粧地蔵愛を育んできた。

そんな竹田館長の化粧地蔵愛が込められた「お地蔵さん歩スタンプラリー」は、事前に配られるマップを頼りに、定められた5箇所のポイントと化粧地蔵を探し、専用の木札にスタンプを集めるというもの。また、参加賞も”南無地蔵大菩薩”と書かれた特製の塗り箸、化粧地蔵を象ったクッキーと化粧地蔵愛に溢れている。

当日は、総勢400名程の参加者が集まり、次々に化粧地蔵探しの旅に出かけて行った。

木札と参加賞のお箸とクッキー
マップを頼りに化粧地蔵を探す子どもたち

スタートすると間もなく「こんなお地蔵さん見たことないわー」と子どもたちの声が聞こえてきた。地域の子どもたちにとって馴染みのある化粧地蔵だが、自分の町内の化粧地蔵以外はあまり知らない。そのため、見つけるのに四苦八苦している様子。

普段は静かな町内に、楽しそうな子どもたちの姿と声が、あちこちに溢れていた。

化粧地蔵の祠と子どもたち 後ろには小浜湾を望む
祠を覗き込んでお地蔵さんを確認中
各ポイントで木札にスタンプを押すのは地域の方

「いろんな姿のお地蔵さんが見れて良かった。来年はもっときれいなお化粧をお地蔵さんにしてあげたい!」そう話すのは6年生の女の子。やはり、地蔵さんにきれいなお化粧をするには女の子の力が必要だと気付かされた。

普段は祠に五色旗が付けられることはないが、今回のイベントの特別仕様

総移動距離4kmの化粧地蔵探しの旅を終え、参加者たちが続々とスタート地点に戻ってきた。今回のイベントに合わせてキッチンカーや物販スペースも用意され、小腹の空いた子どもたちはゴールするとすぐに小銭を握りしめ、久しぶりの”お祭り”を楽しんだ。

ゴール後のイベント会場の様子

しかし、化粧地蔵イベントはまだ終わりではない。この後、野外ステージで西津小学校の子どもたちによる「地蔵盆のうた」に合わせた踊りが披露された。

「地蔵盆のうた」に合わせて踊る西津小学校の子どもたち

「まいってんの〜まいってんの〜まいらにゃとおさんぞ」

この2年間、町から聞こえてこなかった”呪文”に合わせて楽しそうに踊る子どもたちの姿を見ていると、自分自身の子どもの頃を思い出した。もう”呪文”を一緒に唱えることは出来ないが、西津で生まれ育った一人の大人として、この大切な地域の宝を守って行きたいと強く思った。

2022年も開催!『123体のお地蔵さん歩スタンプラリー』

2022年の開催チラシ
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松本啓典

松本啓典

若狭塗箸の老舗メーカー「株式会社マツ勘」の4代目。

1986年福井県小浜市の西津生まれ。若狭塗箸の老舗メーカー「株式会社マツ勘」の4代目。お箸の無限の可能性を追求しながら、小浜の未来を創造していきたいと考えています。 お箸の端材で米を炊いたり、ピザを焼いたり、サウナをしたり…。座右の銘は「遊びも仕事のうち」。特技は走ること。陸上800m日本歴代5位(2020年11月時点)。

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