小浜駅から海の方向へと歩くと、多くの飲食店や雑貨店が立ち並ぶ「はまかぜ通り」と呼ばれる商店街がある。はまかぜ通りでは、夜になると多くの居酒屋の明かりが灯る。そのうちの1つが「オバママ」だ。今回はその店長である荒井進一郎さんにお話を伺った。
お店は、オーナーである谷口泰子さんが約14年前にオープンさせた。家庭的な、おふくろの味(おばんざい)を提供する小浜のお店にしたいという思いから「オバママ」という屋号がつけられた。オーナーと幼馴染だった荒井さんがこのお店で働くようになったのはオープンから約3年後のこと。元々、ホテルや料亭の厨房で腕をふるっていた荒井さんは、和食から洋食までなんでもできた。その経験から、最初は一品料理の調理を担当し、店長を任されるようになったそうだ。
お店には地元の方だけでなく、嶺北や県外から訪れた方も常連となってくれるほど評判のお店だ。海産物や野菜など若狭小浜で採れたものをふんだんに使ったメニュー豊富なオバママ。その中でも締め鯖と甘鯛(若狭ぐじ)の若狭焼は特に人気があるとのこと。甘鯛の若狭焼は焼く前に表面を一度油で揚げるため、鱗がパリパリと香ばしく、身がふわふわ。香りも味も絶品。その上、1匹丸ごと提供されるためインパクト抜群だ。
メニューは、老若男女みんなに親しまれるようにという思いから、先述した地場産のものに加えて、鶏、牛、豚、馬、魚、野菜なんでもそろっている。その中でも荒井さんのおススメは、締め鯖と生へしこスライスとのこと。締め鯖をいただいたが、素晴らしい塩梅の締め具合が鯖本来のうまみを生かし最高。日本酒と合わせたら、なお最高。
生へしこスライスは、そのままでは塩気の強いへしこを食べやすいようにした創作料理。これまた、今まで食べたへしことは違った衝撃だった。おいしさと驚きにあふれたこの料理は、あえて具体的な感想は言いません(笑)。ぜひ実際に召し上がっていただきたい逸品です。
店長の荒井さん自身についても少し伺った。
店長として大切にしていることを聞いてみると、「お客さんの笑顔が得られることを大切にしています。何より、お客さんがオバママの料理を通じて笑顔になっているのを見るのはうれしいですからね。例えば、コース料理(要予約。\2000~)を考えるときなんかはコース全体を通して満足していただけることを意識しています。小浜の食材は海産物や野菜など元々のポテンシャルが高いものが多いので、素材本来の良さを生かした調理をするように心がけています」と教えてくれた。
さらに、荒井さんは料理だけでなく、雰囲気や居心地の良さといったお店の空間も大切にしていると言う。
「お客さんにリラックスしてもらえることは心がけていますね。話をしたそうなお客さんがカウンターに来られたら積極的に話しかけます。もちろん、会話したくなさそうなお客さんには話しかけません(笑)。なので、会話のネタになる小浜のこと、ニュースやスポーツなんかの情報は常にアンテナを張っています。また、お店自体の設計もそうで、カウンターや座敷のテーブル席は、椅子、机の高さなど、お客さんに居心地が良いと思ってもらえるよう調整しています」。
小浜市にはおいしい居酒屋がいくつもある。しかし、オバママは料理のおいしさだけではない。居心地の良さや店長をはじめとしたスタッフの暖かさにあふれている。居酒屋なのでグループや団体の利用はもちろんだが、2人でも1人でも気兼ねなく入ることができる。
少人数で利用する際は、ぜひカウンター席に座ってみてほしい。おいしい料理と荒井さんとの会話(お店が忙しくないとき)で、きっと体も心も笑顔になれるはずだ。
福井県立大学 岡田優暉斗
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